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保護者に出来る帰国前後のグッドアクション|実践編1

滞在地での毎日に忙しくても、気になるのが、帰国後の我が子の学校生活。「日本でも楽しんでもらいたい」という切なる願いを実現するため、保護者が帰国前後にできることとは何でしょうか。3人の専門家に提案してもらいました。

実践編|具体的な悩みや違和感に対する動きかた

日本の学校は協調性を重視しすぎではないでしょうか
個性を出しにくいと子どもが嘆いています

個性

<国・学校のAction>
「皆に合わせておけばよい」が通じなくなる授業をスタート

学習指導要領の改訂で、2022年度から高等学校に「総合的な探究の時間」が登場。生徒自身が主体的に課題を設定して探究し、自律性を高めるのが目的で、日本で見られる「皆に合わせておけばよい」「平均点をとればOK」という姿勢は通用しない時間になるという。小中学校では2000年度から「総合的な学習の時間」を設けており、これが「総合的な探究の時間」の基盤に。

<保護者のAction>
学校と家庭で役割分担をすると考える

大人でも公の場での人間関係や友だち関係において、「個性」と「協調性」の狭間で揺れ動くことはよくあること。大人よりも人生経験の少ない子どもなら、そんな場面で深く悩むのは自然なことだろう。海外で「個性」を重んじる教育を受けてきた子どもであれば、「集団」を重んじる日本の公教育のあり方に違和感を覚え、「自分らしくありたいけれど、出しすぎないほうが無難かな」と葛藤を重ねてしまいやすい。教育社会学者の内田氏は「そんな葛藤をまずは家庭で受容・肯定することから始めてください」と話す。

「子どもの葛藤を保護者がしっかり受け止めて肯定すると、子どもは『自分は間違っていないんだ』と考えられるようになり、それを大きな励みとします」(内田氏)

肯定の次は役割分担。中里氏は集団のメリットを学校に担ってもらい、デメリットを家庭で補うことを提案する。

「メリットとは例えば、集団によって協調性や共感力が育つことです。デメリットとは『ちゃんと整列しなさい』『大きな声ではっきりと話しなさい』『お手本に従って動きなさい』といった指導により、規律を守らなければダメだという考えにとらわれて、自分らしさをおさえ、積極性や自信をなくしてしまうこと。家庭では子どもに『個々は大切にされる、尊重される』という感覚を持たせるために、規律を意識させる言葉は控えて、代わりに『こんなことができるなんてすごいね』『そのアイデア、面白いね』『あなたらしい考えで素敵』といったポジティブワードをたくさん浴びせるようにしてください」(中里氏)

あれはダメ、これもダメ…子供が日本の学校の厳しい
校則や持ち物指定で、窮屈そうにしています

<国・学校のAction>
過度なものは人権侵害に当たるとして校則の見直しを進める

校則で下着の色を規制している区立中学校が東京23区で40%弱(2021年6月現在)。近年ではそういった過度な校則が人権侵害に当たるとして社会問題に。2021年6月、文部科学省は社会や時代の変化に合わせて校則を見直すよう求める通知を都道府県教育委員会などに出し、積極的な対応を要請した。

<保護者のAction>
複数名の保護者の総意として学校に相談

「国・学校のAction」の例に加え、小学校や高等学校でも髪型や髪飾り、ペンケースの材質など、細かい制限が散見される。そんな制限に一石を投じるのは〝保護者の声〟だと内田氏は話す。

「保護者として学校に相談や問題提起をする際に『海外ではこうだった』と伝えると、『ここは日本だから』と返されてしまいます。そうならないように、『海外で過ごした結果、子どもが今、〇〇のような感覚を持っていて…』と子ども中心の説明を心がけます。さらに本格的に動くとすれば、同じような悩みや疑問を持っている仲間を見つけて、複数名の保護者の総意として学校に相談してみるのがよいと思います」(内田氏)

日祝日も長期休み中も部活、部活、部活…!
部活動の時間が長いです
朝練もきつそうです

<国・学校のAction>
休日の部活動の段階的な地域移行など具体的な案を示す

「生徒の部活動の時間が長いことは、教師の長時間勤務の要因にもなりうる」として、文部科学省の外局であるスポーツ庁は2020年9月に『学校の働き方改革を踏まえた部活動改革』の概要を発表。「休日の部活動の段階的な地域移行(地域人材の確保)」「他校との合同部活動の推進」などの案が示された。

<保護者のAction>
無理なく楽しめる部活動を探すよう促す

「日本の学校の部活動は形骸化しており、生徒にとっても顧問教員にとっても〝義務化〟しているケースが少なくありません」

そう話すのは、日本の教育の多様化を求めて動く竹内氏。日本では一般的に中学校から部活動が始まるが、入るか入らないかは基本的に生徒個人の自由で、強制されるものではない。とはいえ、内申書への記載も気になるが…。

「私の周囲には、小学校のアウトドア学童クラブでのサポーター(先輩としての補助)の活動を中学校が部活として認める、といった例もあります。また文化部であれば、無理な朝練もないことが多いので、一つの選択肢になるように思います」(竹内氏)

お話を伺った方

名古屋大学大学院准教授 内田良(うちだ・りょう)氏

教育発達科学研究科所属。専門は教育社会学。『ブラック部活動』(東洋館出版社)、『教育という病』(光文社)など、「部活動・教職を持続可能にすること」に関する著書や共著多数。

臨床心理士 中里文子(なかざと・あやこ)氏

メンタルヘルス・ケアの専門家、AGカウンセリングオフィスの代表。教育委員会や児童相談所での子育て相談に加えて、一般企業の駐在員とその家族のためのカウンセリングも行う。

フリースクール校長 竹内薫(たけうち・かおる)氏

小3から小5までアメリカの現地校に通った帰国子女。現在はNPO法人日本ホームスクール支援協会認定校、YES International School 東京校の校長として、多様な学びを推進している。

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