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保護者に出来る帰国前後のグッドアクション|実践編3

滞在地での毎日に忙しくても、気になるのが、帰国後の我が子の学校生活。「日本でも楽しんでもらいたい」という切なる願いを実現するため、保護者が帰国前後にできることとは何でしょうか。3人の専門家に提案してもらいました。

具体的な悩みや違和感に対する動きかた

もっとインタラクティブな授業を増やしてほしいです
知識編重で、授業を楽しめないそうです。

インタラクティブ

<国・学校のAction>
強化担任制のスタートでインタラクティブ化に追い風

新しい学習指導要領で示されているのは、子どもたちが主体的で対話的に学べるように授業を改革する方針。ディベートやグループワークの大切さが強調されている。また日本全国の公立小の高学年を対象に、2022年度から教科担任制がスタート。各教員が専門教科に注力することになる。これによって、児童からの意見の引き出し方の精度が上がることも見込まれる。

<保護者のAction>
先生に働きかけるか学校自体を変えるか

「日本の公立校では、新しい学習指導要領のもと、『主体的・対話的で深い学び』に向けた授業改革が目下進行中。まさに双方向型のインタラクティブな学びへと、舵を切ろうとしている段階です。とはいえ、学校現場がすぐそうした学びにシフトするかといえば、現実には難しいものがあります。特に中学校や高校は受験を控えていることもあり、旧来型の授業から脱却できないケースも多いでしょう」と話すのは教育ジャーナリストの佐藤氏。しかし旧来型の授業を行う学校の先生にも、新しい学びの必要性に気づき始めている人は少なくないのだという。

「担任との面談などの際、新しい学びへの興味を丁寧な言葉で伝えつつ、『私に何か協力できることがあれば言ってください』などと伝えてみてはいかがでしょうか。プロジェクト型の学びは準備が大変ですし、保護者や地域の協力を求めている教員も少なくありません」(佐藤氏)

では、教育改革を待たず、今すぐに新しい学びを子どもに与えたい――そう考える保護者はどうすればよいのだろうか。

「日本にも探究型、プロジェクト型、アクティブ・ラーニング型の授業を積極的にしている学校は私立校を中心に存在します。『我が子が海外の学校の授業を心から楽しんでいる』という場合は、授業のどこが好きかをお子さんによく聞きます。それを帰国前の情報収集段階から意識して、学校選びを進めるようにするとよいでしょう」(竹内氏)

このほか、探究型の学習塾や科学塾を見つけて、帰国後に通わせるのも良案だという。

海外では中学校で第二外国語を学べたりレベル別で授業を受けられたりしていました
授業の選択肢をもっと増やしてほしいそうです

<国・学校のAction>
授業でも給食や係活動でも選択肢拡大中

小中高で重視され始めている「探究学習」では授業が教科横断的なものになるため、この面では選択肢が増えているという見方もできる。また、好きなおかずを事前に選んでおく“リザーブ給食”の登場、“インテリア係”など学校オリジナルのユニークな係活動の登場など、授業以外での選択肢も増えてきている。

<保護者のAction>
新しい学習機会やツールを積極的に取り入れる

「我が子に合った授業を展開する私立校に通わせる」という選択をせず、「通っている公立校で授業の選択肢を増やしてもらう」ということは可能なのだろうか。

「教科の変更や追加は国による制度上の変更を伴うことが多く、ハードルが高いと言わざるを得ません。ただ最近では、東京都をはじめとする各都道府県で、小学校の算数、中学校の数学と英語の授業で、習熟度によって分割するという方法が推進されています。また、オンライン学習、外国語を学べるアプリ、個別最適学習が叶うアプリなど、学習機会やツールも確実に増えてきていますので、それらを併用していくのもよいでしょう」(内田氏)

きちんと使える英語力を保持・伸長させてほしいです
”受験英語”に戸惑いがあるようです

<国・学校のAction>
中学校の英語では4技能5領域の学習をスタート

2020年度から小学3~4年生で外国語活動を、5~6年生では教科として英語を学習。中学校では「聞く」「読む」「話す」「書く」のうち「話す」の技能に「やり取り」「発表」の領域が加わり、4技能5領域を学習(高等学校では2022年度から)。英検やTOEIC®等の民間試験を大学入試で併用する案も出た(※)。

*導入は「居住地域や家庭の経済状況により民間試験の受験機会に格差が生まれる」「採点時に公平性を保つのが難しい」などの理由で2021年7月に見送られている。

<保護者のAction>
脱・受験英語が絶対なら選ぶ学校を私立にしぼる

「国・学校のAction」にあるように、英語に触れるスタートラインの低年齢化、中学校以降では実用的な英語力取得を主眼に置いた学習へのシフトなど、日本の英語教育に関する近年の変化の度合いは大きい。ALT(外国語指導助手)の活用人数も、2013年度から2018年度で2倍近くに。

ただ、「海外で培ったネイティブ並みの英語力を保ちたい(保ってほしい)」ということであれば、日本で通う学校の選択が要。

「選択肢は、校内の公用語を英語としていたり、英語イマ―ジョンで多くの授業を展開していたり、帰国子女が多く在籍していたりする私立校にしぼるのがよいでしょう」(竹内氏)

お話を伺った方

教育ジャーナリスト 佐藤明彦(さとう・あきひこ)氏

『月間 教員養成セミナー』元編集長。近著は『GIGAスクール・マネジメント「ふつうの先生」がICTを「当たり前」に使う最先端自治体のやり方ぜんぶ見た。』(時事通信社)

フリースクール校長 竹内薫(たけうち・かおる)氏

小3から小5までアメリカの現地校に通った帰国子女。現在はNPO法人日本ホームスクール支援協会認定校、YES International School 東京校の校長として、多様な学びを推進している。

名古屋大学大学院准教授 内田良(うちだ・りょう)氏

教育発達科学研究科所属。専門は教育社会学。『ブラック部活動』(東洋館出版社)、『教育という病』(光文社)など、「部活動・教職を持続可能にすること」に関する著書や共著多数。

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