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専門家にSOS!「こんなとき、どうすればいい!?」駐在生活の悩みを軽くする15のことば⑭

【落ち込みとイライラにバイバイ】

海外滞在で悩んだときの気持ちの晴らし方

日本と勝手の違う海外では、気付かぬうちにストレスが溜まり、気分がドーンと落ち込んだり、イライラしたり…ということも。精神科医の大野氏によると、即効性のある対処法は「考えを整理すること」だといいます。

海外滞在で悩んだときの気持ちの晴らし方

大野裕

精神科医
大野裕氏のことば

落ち込んだときは、マイナスの「自動思考」がいきすぎ状態になっています。それを自覚するのが心を元気にする第一歩です。

落ち込みにバイバイ①

ネガティブになるのは悪いことではないと考える

何をやってもうまくいかないときは、ふだんなら笑ってやり過ごせることも重く受け止めてしまいがち。

旧知の友が遠く離れた日本にいる海外滞在中はことさら、物事を悪いほうへ考えてしまうという方もいるだろう。

しかし、こうしたネガティブ思考に注目した治療法「認知療法」の専門家・大野氏によると「『ネガティブに考えるのはいけない』と考えることこそがいけない」という。

「ネガティブに考えると問題に気づきやすくなります。そうすれば失敗しにくくなりますし、仮に失敗しても大きな問題にならないですみます」(大野氏)

落ち込みにバイバイ②

『自分の想像』と『現実』はズレていることもあると知る

ネガティブな状態を受け入れられたら、次は自分の考えの検証をするのが大野氏のおすすめ。

「何が起こって落ち込んだのか」「そのときどんなことを思ったのか」このふたつを考えてみてほしい。例を挙げる。

①駐在妻の仲間にそっけない態度をとられた。
②自分は嫌われている。とても悲しい。

「この『そっけない態度をとられた』→『嫌われている』という思考の流れは、自分では意識せず自動的にそう考えてしまっているという『自動思考』。

落ち込んだときは、これに悪い意味ではまってしまっていることが多いのです」(大野氏)

落ち込みにバイバイ③

とにかく自分が救われる可能性に目を向けてみる

「マイナスの『自動思考』の暴走を自覚できると『そっけない態度をとられた=嫌われているとは限らない』と思えるようになる」と大野氏は言う。

そっけない態度がそもそも気のせいだった可能性や相手が急いでいた可能性、相手に何かイヤなことがあって余裕がなかったという可能性もある。現実を確認するまでは分からないのだ。

「もちろん、嫌われている可能性もあります。もし嫌われてもいいと考えるのなら、そのまま距離をとればいいでしょう。

しかし、仲よくしたいと考えるなら『嫌われている』と決め付けてしまわないこと。そう考えてあきらめると、問題が大きくなってとり返しがつかなくなってしまいます。大事なのは勇気を持って『何が起こっているか』や『どう思っているか』を相手から聞き出し、自分に非があれば謝ることです。

その上で、これからどうなってほしいと期待するか、そのためにどんな工夫ができるか。この2点を書き出して考えを整理することが、落ち込んだ状態から脱するために役立つでしょう」(大野氏)

マイナスの「自動思考」6つの暴走に注意!

① 思い込み(決め付け) 根拠が不十分なのに「こうに違いない」と決め付けてしまう。こんなとき、人は別の可能性を見て見ぬふりしてしまいがち。
② 白黒思考 あいまいでモヤモヤした状態から早く抜け出したくて、物事をすべて「白か、黒か」「いいか、悪いか」のふたつで分けて考える。
③ べき思考 うまくできなかった過去の自分を反省して「こうすべきだった」「ああすべきではなかった」と思い悩んだり、悔やんだりする。
④ 自己批判 悪いことが起こったとき、たとえそれが自分の力ではどうにもならなかったことだとしても、自分のせいだと考えて自分を責める。
⑤ 深読み 相手の気持ちを一方的に推測。「相手はこう思っているに違いない」「自分のことを悪く思ったに違いない」などと決め付ける。
⑥ 先読み 「きっと明日もうまくいかない」と悲観的な予測を立てて、自分で自分の積極性や可能性を奪う。結果、予測通り、うまくいかなくなる。

お話を伺った方

精神科医 大野裕氏

「国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター」顧問。認知行動療法活用サイト『こころのスキルアップ・トレーニング』(http://www.cbtjp.net)を監修。著書は『「こころ」を健康にする本─くじけないで生きるヒント』(日本経済新聞出版社)『こころが晴れるノート』(創元社)など多数。

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