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世界で進むSTEM(ステム)教育、日本ではどうなってるの?④|国際高等専門学校の事例

英語で学ぶSTEM教育でグローバルイノベーターを育てる

2019年4月に開校した国際高等専門学校は、15歳から大学院卒院までの9年間一貫教育が特徴。世界標準の工学教育となる英語でのSTEM教育により、次世代で活躍する人材育成に取り組んでいる。

数学や物理は世界共通。だからこそ英語で学ぶ

英語でSTEM教育の授業を行っているのが、国際高等専門学校(以下、国際高専)だ。同校が目指すのはグローバルイノベーター(激動する国際社会で、さまざまな問題を解決し、新しい価値を創出できる人)の育成で、金沢工業大学・大学院と連携し、高専5年、大学2年(3年次から編入)、大学院2年の9年間一貫教育を実施している。

国際高専の1・2年次は白山の麓に位置するキャンパスで寮生活を送り、3年次はニュージーランドへ1年間留学。4・5年次は、金沢工業大学のキャンパスで大学生と共にプロジェクトに取り組む授業にも加わる。

カリキュラムの柱は、英語によるSTEM教育だ。この中には、専門基礎教育(数学や物理、化学、生物など)、エンジニアリングデザイン教育、課外活動プログラムが含まれる。英語で授業を行う理由について、国際理工学科学科長で教授の松下臣仁(まつした・おみひと)氏は、「物理や数学は世界共通の真理なので、英語で学んでおいた方が、のちに留学したり海外で働いたりするときに役立ちます」と話す。授業には日本人の先生もサポートで入るという。なお、国語や歴史文化の授業は、日本語で行われている。

新たな解決策や価値を生み出せる力を育む

同校のSTEM教育と構成要素となっている「エンジニアリングデザイン教育」について、国際理工学科副学科長で准教授の伊藤周(いとう・めぐる)氏は、「国際高専のエンジニアリングデザイン教育では、社会の諸問題の解決に貢献するために、新たな技術、価値、概念をつくりだすことを目標にしています。この力を育成すべく、チームを組んで身近な生活環境や地域課題をテーマに課題を発見し、解決策を出し合って形にする授業を展開しています」と説明する。

再生可能エネルギーについて理解するために発電機を製作する、といった具合だ。課外活動プログラムでは、白山麓周辺地域の問題に対して理数系の見地から解決策を提案し、今後は獣害対策や地域の文化財保護といった課題にも取り組んでいく。「地域共生の意識や人間力を育み、グローバルイノベーターとしての素養を身に付けていきます」(松下氏)。

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