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世界で進むSTEM教育日本ではどうなってるの?①

アメリカを筆頭に世界で実施されている「STEM教育」。日本では、STEM教育の一環としてプログラミング教育の必修化が決定し、小学校では2020年度から、中学校では2021年度から、高校では2022年度から実施されます。STEM教育とは一体どのようなものなのか、専門家のお話とともに実際の学校の例を見ながら探っていきます。

STEM教育の始まりと日本への浸透

「STEM教育って?」「何のために行うの?」「日本での実施状況は?」といった疑問について、STEM教育に関する著述を発表しているコアネット教育総合研究所の清水葉子氏にお話しを伺いました。

オバマ前大統領の演説で浸透したSTEM教育

今、日本の教育現場で注目されているのが、STEM教育だ。STEMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字をとったもので、90年代にアメリカで使われ始めた(コラム1)。これからの社会に対応するために、これら4つの領域の力を身に付けるべき、という教育モデルだ。

「STEM教育が重視されるようになった根底には、STEM人材(専門性の高い理工系職に就く人)の需要拡大と不足があります(コラム2)」と話すのは、STEM教育に関する著述を持つコアネット教育総合研究所の清水葉子氏だ。

清水氏は、アメリカでSTEM教育が広まったきっかけとして、バラク・オバマ前大統領が2009年の就任時に、幼稚園から高校までのSTEM教育の向上のために多額の民間投資を実施したことを挙げる。さらに、2013年に国民に向けて公開したビデオメッセージにより、一気に浸透したとする。

「アメリカが最先端の国であり続けるには、若い国民に、私たちの生活を変えてくれるようなツールや技術を習得してもらわねばならない、と述べています。『新しいゲームを買うだけではなく、つくってみよう』という呼びかけは、多くの人の心に響きました」(清水氏)

日本の小学校でもまもなくプログラミングが始まる

日本でもSTEM教育の導入が決定し、その一部として2020年度から小学校でプログラミング教育が必修となる(順次、中高で教科化)。

「保護者の中には『小学生のうちからプログラムが書けるようにならなくてはいけないのか』と不安に思う人も多いようですが、そうではありません。STEM人材をもう少し広くとらえると、新しいものをつくりだせる高い創造性を持った人といえます。つまり、そのような力を育むことが、プログラミング教育の目的なのです。2018年6月に文部科学省から出された提言(society5.0/コラム3)を見ても、STEM人材の不足を前提としながらも、個々の主体性や創造性が求められていると感じます」(清水氏)

現在のところ、小学校では現行の授業にプログラミングの要素を盛り込むことになっていて、カリキュラムについても検討中だ。

清水氏は、「プログラミング教育の導入は、近年教育現場で注目されているインプット型の教育からアウトプット型の教育へ移行する流れのひとつです」と言う。

プログラミング教育では、コンピューターの仕組みについて興味を持ったり机上で学んだりするだけでなく、講義で習得した知識を目に見える形で試してみることができる。また、何か目的を決めて、そのために必要な技術や知識を習得するという学習の仕方にも、プログラミング教育は適している。

さて、STEM教育全般に話を戻すと、近年では、STEM教育にART(アート)を加えたSTEAM教育というものもある。

「人が求める答えにたどりつくためには、多くのアイディアを出し、試行錯誤しながら答えを絞り込んでいきますよね。この、アイディアを出す思考の段階を拡散思考といい、手を動かすなど五感を使って自分なりの表現をするような芸術活動(=ART)は、これに適していると言われています。つまり、ARTを加えたSTEAMによって、拡散思考をより育むことができるのです。卵を落としても割れないプロテクターをつくるエッグドロップという学習プロジェクトもSTEAMの一例です」(清水氏)

STEMもSTEAMもさまざまな学習法があり、プログラミングもその中のひとつに過ぎない。先に挙げたエッグドロップのように、プログラムを書かない、ときにはコンピューターさえ使わない授業もある。

学習ツールを使えば家庭でもSTEMは学べる

STEMやSTEAMを学ぶ場としては学校のほかに習い事としての教室もあるが、「家庭でもできます」と清水氏は話す。

例えば、イギリス発のプログラミングを楽しめる小さなコンピューター「micro:bit」(BBC)。イギリスの11歳と12歳の子ども全員に無償配布されたもので、ホームページには日本語の説明もある。

また、「MESH」(ソニー)はブロック形状の電子タグで、アプリ上でつなげることでセンサーやライトなどを活用したさまざまな機能を実現できる。IoT(モノやコトをインターネットにつなぐこと)を手軽に体験できるツールとして、中高生でも楽しめるのが魅力だ。

「こうしたツールで遊ぶのもいいですね。これから求められるのは、新しいものを生み出すイノベーティブな力。そのためには、個性を大切にし、自由に思考を広げ、形にしていく、という環境が必要です。親が手順を教えるのではなく、子ども自らが自由にやってみるのがよいのです」(清水氏)

STEMとは?

S=Science(科学)
T=Technology(技術)
E=Engineering(工学)
M=Mathematics(数学)

もともとは、1990年代にアメリカ国立科学財団(NSF)が使い始めたSMETという言葉。しかし、“汚れ”を意味する“SMUT”に似ていることから、2003年頃を境にSTEMという名称に切り替わった。2008年には、STEMの概念にA=Art(芸術※他の解釈もあり)を加えたSTEAMも提唱された。

日本のIT人材の最新動向と将来予測

2015年時点で約17万人のIT人材が不足(※1)

2030年には約59万人まで不足規模が拡大(中位シナリオの場合)

IT人材の不足は2015年で約17万人だったが、2030年には約59万人に増加の見込み。IT需要が拡大する一方で、少子化と高齢化により2019年をピークにIT関連産業で働く人が減少するため。

文部科学省が示したこれからの社会に必要な力と人材(※2)

共通して求められる力

  • 文章や情報を正確に読み解き対話する力
  • 科学的に思考・吟味し活用する力
  • 価値を見つけ生み出す感性と力、好奇心・探求力

新たな社会を牽引する人材

  • 技術革新や価値創造の源となる飛躍知を発見・創造する人材
  • 技術革新と社会課題をつなげ、プラットフォームを創造する人材
  • 様々な分野においてAIやデータの力を最大限活用し展開できる人材

など

※1「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果(報告書概要版)」(2016年6月、経済産業省発表)より一部抜粋
※2「Society 5.0に向けた人材育成 ~社会が変わる、学びが変わる~(概要)」(2018年6月、文部科学省発表)より一部抜粋

お話を伺った方

清水葉子氏

清水葉子氏「コアネット教育総合研究所 経営企画室研究員」

東京理科大学大学院 理工学研究科修了。2003年より現職。私立中学校・高等学校にて、入試広報活動の支援や、学校独自の魅力づくりに関わる。現在は、私学の魅力を広く伝える活動と、子ども達の創造性を高める教育環境についての研究、発信を行っている。

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