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保護者の理解も少なく、10代LGBTQの深刻な悩み(後編)

(前編) から引き続き、LGBTQユース(LGTBQの子どもや若者)が抱える問題についての調査結果を紹介する。認定NPO法人ReBit(リビット)が実施した調査で、12~34歳のLGBTQの人々が対象。有効回答数2623人分を分析したところ、自殺を考えたことのある人が多く、孤独感を深めやすい、など、7つのポイントが見えてきたという。(後編)では、4つめ以降のポイントと、この調査を行ったReBitの代表理事であり、行政、学校、企業等でのLGBTに関する研修やLGBT就労支援などに尽力している藥師実芳(やくし・みか)氏の話を紹介する。

4・約9割が保護者との関係で困っている

LGBTQユースの91.6%が保護者に自身のセクシュアリティに関して安心して話せない状況にあり、89.1%が保護者との関係で困難を経験したと回答した。「親にカミングアウトしていないので、自分の好きな服を着たいと言えず、着ることができない」(12歳)、「親に探りを入れられる度に『そんなわけない』と嘘をついて笑うことが辛かった」(18歳)、「12年前に母にセクシュアリティがバレたとき『二度と女性とは付き合いません、男性と結婚し子どもを産みますと復唱しろ』と言われ拒否したら、3日間部屋に監禁された。恥ずかしい、なんで産まれてきたの、いっぺん死んできて、とも言われた」(32歳)といった切実な声が寄せられている。

5・LGBTQ学生の7割が学校で困難を経験

学校で性の多様性について学ぶ機会が増えている一方で、LGBTQ学生の70.7%が、過去1年に学校で困難やハラスメントを経験したと回答。「男女別整列や名前の“さん・くん”分けなど、不要に男女分けをされた」(39.0%)などの声が多いが、困っているにもかかわらず、LGBTQ学生の93.6%が教職員にセクシュアリティに関して安心して相談できないと答えている。相談できないだけではなく、「先生が、性別を理由に理想的な行動を指示していた」(27.7%)、「先生が、LGBTQに関してネタや笑いものにしていた」(12.8%)など、教職員が困難の要因となっていることも多いことがわかった。

6・就活で困難やハラスメントを経験

この1年で就職・転職を経験したLGB等の35.7%、T(トランスジェンダー=出生時に割り当てられた性別と自認する性別が異なる人)の75.6%が、採用選考時に困難やハラスメントを経験したと回答。LGB等の場合は、「選考時にカミングアウトをすべきか、どの範囲ですべきか分からず困った」(16.1%)、「人事や面接官から、LGBTQでないことを前提とした質問や発言を受けた」(13.3%)といった声があり、トランスジェンダーの場合は「エントリーシートや履歴書に性別記載が必須で困った」(41.2%)、「性自認と異なるスーツ・服装、髪型、化粧をしなくてはならず困った」(27.3%)などの声が多くあがっている。

なお、25歳~34歳のLGBTQのうち、この1年で10.5%が長期欠勤や休職を経験し、13.0%が仕事を辞めている。

7・セクシュアリティを認知したとき、7割が不安に

セクシュアリティを認知したとき、LGBTQユースの69.9%が不安や恐れを感じたと回答。具体的には、「自分は変なのではないかと思った」(37.7%)、「人に言ってはいけないと思った」(35.0%)、「家族に知られたら悲しませるのでは、怒られるのではと思った」(34.5%)、などが挙げられる。また、その当時を振り返って、LGBTQユースの54.9%が「相談したかった、情報がほしかった」と回答している。

なお、LGBTQユースが自身のセクシュアリティを初めて認知した平均年齢は14.3歳、初めてカミングアウトをした平均年齢は18.5歳で、認知から約4年間は誰にも言えず、相談もできなかったことがわかる。

こうした結果を受けて、ReBit代表理事の藥師実芳(やくし・みか)氏は、
「LGBTQユースは、自殺、メンタルヘルス、孤独孤立のハイリスク層なので、学校や地域、行政で、LGBTQの悩みに対応できるような支援体制づくりを急ぐことが必要です」と訴える。

また、藥師氏は、海外在住の日本人からLGBTQに関する相談を受けることもあるといい、
「子どもがLGBTQだが帰国後にいじめられないだろうか、といった相談もあります。欧米と日本を簡単に比較はできませんが、一つ言えるのは、イギリスやカナダなどにはLGBTQの差別を禁止する法律がありますが、日本にはないこと。法律面では欧米に学ぶことも多いと思います。帰国子女かどうかにかかわらず、LGBTQユースをサポートする団体はReBitをはじめいくつかあるので、必要に応じてぜひつながってください」と話す。そして、こう力を込める。

「周囲の大人や、子ども・若者支援を行う団体が連携し、理解の促進や支援体制の構築を進めてほしいと思います。その結果、LGBTQユースの自死リスクが軽減され、すべての子どもがありのままで大人になれる社会になることを願います」

(取材・文/中山恵子)

認定NPO法人ReBit代表理事、社会福祉士
藥師実芳氏
(撮影/Junichi Takahashi)