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今年の大学3年生からインターンシップが新しくなる!?(前編)

「ワンデー仕事体験」はインターンシップ?

現在、就職活動の際に多くの大学生が行っている「インターンシップ」。実は、今年から新たな定義が適用されるという。

従来のインターンシップの定義は「学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと」とされ、企業を見学するのみで就業体験のない「オープン・カンパニー」などもインターンシップと呼ばれることもあった。また、1日のみ就業を経験する「ワンデー仕事体験」などもインターンシップと呼ばれていたが、今後は該当しなくなるという。

果たしてどのように新しく定義されたのか? そして、新たな定義のもとでインターンシップに参加することになる現大学3年生による認知度はいかほどか。今日と明日とで見ていこう。

学生自らがその仕事で通用するかを見極める

昨年6月、文部科学省・厚生労働省・経済産業省は、3省の合意により、学生がキャリアを形成する際に企業と大学ができる取り組みを下記の4つのタイプに分類。その4つの中で、3と4がインターンシップであると定義した。

【インターンシップの新しい考え方】
(学生のキャリア形成支援に係る産学協働の取組の四つの類型)

タイプ1 オープン・カンパニー
タイプ2 キャリア教育
タイプ3 汎用的能力・専門活用型インターンシップ
タイプ4 高度専門型インターンシップ(試行)

3と4がインターンシップであるされた理由は、「学生がその仕事に就く能力が自らに備わっているかどうか(自らがその仕事で通用するかどうか)を見極めることを目的に、自らの専攻を含む関心分野や将来のキャリアに関連した就業体験(企業の実務を経験すること)を行う活動」であるからである。「見極める」にはある程度日数が必要なため、期間は最低でも5日間以上。冒頭で触れた「ワンデー仕事体験」は就業体験を含むが、インターンシップに該当しないのはそのためである。

キャリア形成のための取り組み4タイプとは?

タイプ1「オープン・カンパニー」とは企業による説明会やイベントなどのことで、タイプ2「キャリア教育」は大学などの講義や企業による教育プログラムのこと。ともに、これまではインターンシップと呼ばれるケースもあったが、就業体験が含まれないので、今年からは「インターンシップ」には当たらなくなる。

インターンシップと定義されたタイプ3と4をもう少し詳しく見よう。

汎用的能力活用型:汎用的能力(仕事をするうえで必要な「人間関係形成・社会形成能力」「自己理解・自己管理能力」「課題対応能力」「キャリアプランニング能力」)を生かして、職業体験をすること。「インターンシップをした」と認められるためには。「汎用的能力活用型」で5日間以上活動する必要がある。

専門活用型:専門(大学で学んできた専門性)を生かして職業体験をすること。インターンシップとして認められるには2週間以上活動する必要がある。

高度専門型:高度な専門性を有する大学院学生が対象で、長期間(2カ月以上)かつ有給の研究インターンシップ。正規の教育課程の単位科目として実施される。

タイプ1・2は除外、3・4がインターンシップ

類型 取組みの性質 主な特徴
タイプ1:
オープンカンパニー
※オープンキャンパスの企業・業界・仕事版
個社・業界の情報提供・PR
  • 主に、企業・就職情報会社や大学キャリアセンターが主催するイベント・説明会を想定
  • 学生の参加期間(所要日数)は「超短期(単日)」。就業体験は「なし」
  • 実施時期は、時間帯やオンラインの活用など学業両立に配慮し、「学士・修士・博士課程の全期間(年次不問)」
  • 取得した学生情報の採用活用への活用は「不可」
タイプ2:
キャリア教育
教育
  • 主に、企業がCSRとして実施するプログラムや、大学が主導する授業・産学協働プログラム(正課・正課外を問わない)を想定
  • 実施時期は、「学士・修士・博士課程の全期間(年次不問)」。但し、企業主催の場合は、時間帯やオンラインの活用など、学業両立に配慮
  • 就業体験は「任意」
  • 取得した学生情報の採用活動への活用は「不可」
タイプ3:
汎用的能力・専門活用型インターシップ
◆就業体験
◆自らの能力の見極め
◆評価材料の取得
  • 主に、企業単独、大学が企業あるいは地域コンソーシアムと提携して実施する、適性・汎用能力ないしは専門性を重視したプログラムを想定
  • 学生の参加期間(所要日数)について、汎用的能力活用型は短期(5日間以上)、専門活用型は長期(2週間以上)★
  • 就業体験は「必ず行う(必須)」。学生の参加期間の半分を超える日数を職場で就業体験★
  • 実施場所は、「職場(職場以外との組み合わせも可)」
    (テレワークが常態化している場合、テレワークを含む)★
  • 実施期間は、「学部3年・4年ないしは修士1年・2年の長期休暇期間(夏休み、冬休み、入試休み、春休み)」「大学正課および博士課程は、上記に限定されない」★
  • 無給が基本。ただし、実態として社員と同じ業務・働き方となる場合は、労働関係法令の適用を受け、有給
  • 就業体験を行うにあたり、「職場の社員が学生を指導し、インターンシップ終了後にフィードバック
  • 募集要項等において、必要な情報開示を行う
  • 取得した学生情報の採用活動への活用は、「採用活動開始以降に限り、可」
  • ★の基準を満たすインターンシップは、実施主体(企業または大学)が基準に準拠している旨宣言したうえで、募集要項に産学協議会基準準拠マークを記載可
タイプ4(試行):
高度専門型インターンシップ
※試行結果を踏まえ、今後判断
◆就業体験
◆実施力の向上
◆評価材料の取得
  • 該当する「ジョブ型研究インターンシップ(文科省・経団連が共同で試行中)
    「高度な専門性を重視した修士課程学生向けインターンシップ(2022年度さらに検討)」は、大学と企業が連携して実施するプログラム
  • 就業体験は「必ず行う(必須)」
  • 取得した学生情報の採用活動への活用は「採用活動開始以降に限り、可」

出典:文部科学省・厚生労働省・経済産業省「インターンシップを始めとする学生のキャリア形成支援に係る取組の推進に当たっての基本的考え方(2022年6月13日一部改正)」p.8

インターンシップが採用活動に利用OK

今回の改正では、こうした定義の変更ほかに、企業側による利用方法も変更になった。これまで、インターンシップを通じて得た学生情報は採用広報活動に利用できないことになっていたが、新しいインターンシップのもとでは、学生の仕事に対する能力を適正に評価するとともに、採用選考活動時における評価材料を取得することができるようになるのだ。

これまで以上にインターンシップの重要性が高まり、学生の就職活動への影響も予想される。明日は、現大学3年生におけるインターンシップの新定義の認知度や自身の就職活動への影響予想などの調査結果を見てみることにしよう。

(取材・文/大友康子)