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書籍紹介|「いじめは法律違反」を伝えるベストセラー本

小学生時代にいじめに遭った研究者が執筆

2020年の上半期・児童書部門でベストセラー(トーハン調べ、5月29日発表)になった『こども六法』(弘文堂刊)。昨年8月20日、1年で最も子どもたちの自殺件数が多い9月1日を前にして発行され、1年間で約64万部売りあげる大ヒットを飛ばした。

同書は、著書の山崎聡一郎(やまさき・そういちろう)氏がもともと慶應義塾大学総合政策学部在学中にゼミで「法教育といじめ問題解決」を研究する活動の一貫として2014年に作成・自費出版していた内容を再編集したもの。

大人でも難解な法律をイラストつきで、誰でも楽しんで読めるように紹介。この本を通じて正しい法知識を身につけたり、いじめなど苦しい事態に陥った時に自分で自分の身を守る手段として活用してもらうことを目指した。

刑法を知っていれば、いじめに立ち向かえた

山崎氏が「法教育といじめ問題解決」の研究を意図したきっかけは自身の小学生時代。5年生のときに自閉症の友だちを助けたことがきっかけとなり、蹴られて骨折をするなどの酷いいじめを受けたことに遡る。そうした環境から抜け出すべく進んだ私立の中学校の図書室で六法全書に出合い、「小学生のときに刑法を知っていれば、いじめの内容が犯罪だと確信し、学校の外の大人に助けを求めることもできたはずだ」と実感した。

その実感が大学での研究内容へとつながり、さらに、子どもがいじめ・虐待等の被害者・加害者となる事態に対し、子ども自身が法律の知識を得ることで、自分が被害に遭っていることを明確に自覚できたり、知らぬ間に加害者となってしまうことを避けられるようにと、本書『こども六法』の書籍化を決めた。

いじめ経験をもつ同士の協力で出版計画が進行

そうして自費出版で400部を発行後、より多くの子どもたちの目に留まるよう出版社からの刊行と全国発売の機会を探った。法律専門書などを手掛ける弘文堂から出版することは決まったが、なかなか計画は進まず、山崎氏はクラウドファンディングで出版を進めようと発想した。

そのとき協力者となったのが社会活動や新規事業に関するクリエイティブチーム「Creative Capital」(以下CC)を運営する小川凛一(おがわ・りんいち)氏だ。山崎氏と小川氏とはかつてのインターン仲間。山崎氏が慶應義塾大学を卒業後に一橋大学大学院へ進学する前、教育系企業でインターンをしていた時に知り合った。当時から、山崎氏は小川氏に『こども六法』出版の意欲を語っていて、山崎氏と同じく中学生時代にいじめを受けた経験をもつ小川氏の心を強く揺さぶっていた。

小川氏は2018年にCCを立ち上げた時に「最初に手掛けたい!」と真っ先に『こども六法』を思い浮かべて山崎氏と連絡をとり、全国出版に向けたクラウドファンディングをプロデュースすることに。CCは募集ページの作成のほか、支援募集ムービーを作成。

小川氏は、自分が実際に受けたいじめ体験をイメージムービーに落とし込み、いじめという犯罪をなくすための『こども六法』の出版を訴えた。動画のインパクトも幸いし、当初100万円を目標にスタートしたプロジェクトは、179万6000円という予想を大きく超えた支援を集め、全国出版と相成った。

さらに、著者・弘文堂・ Creative Capitaが一丸となり、「全国の教室に一冊ずつ」を目標に、メディア展開等を実施し、とうとう2020上半期ベストセラーにまで上りつめた。

「こども六法」特設サイトでいじめに関する法律の章を公開中

同書を紹介する特設サイトでは、いじめへの対応と防止について学校や行政等の責務を規定している「第7章いじめ防止対策推進法」と、いじめに悩んでいる子どもへのメッセージ「いじめで悩んでいるきみに」を公開中。

『こども六法』は電子書籍の配信もあるので、海外でも入手しやすい。六法に興味をもつきっかけにもなるので、親子で読んでみてはいかがだろうか。

山崎聡一郎著、弘文堂刊『こども六法』。本体価格1200円

(取材・文/大友康子)

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