日本の学校が今まで重視してきた「読む」「書く」に、「聞く」「話す」の2つを加えたものの総称である「英語4技能」。国際化の進展とともに重視されるようになってきました。小学校・中学校・高等学校それぞれの現場における実施の状況と今後の展開予想について専門家に伺いました。
現在の実施状況
小学校
2011年度から5・6年生(高学年)を対象に、「外国語活動」という教科外の活動が週1コマで展開されており(2020年度からの状況は「今後の展望」参照)、ALT(外国語指導助手)の活用人数も年々増加。英語のあいさつ、ゲーム、歌といった「聞く」「話す」が中心の活動が行われた結果、実施1年後の児童を対象としたアンケートで約7割が『英語が好き』と回答する(※1)など、一定の成果が出ている。一方で、その活動を終えて中学生になった生徒へのアンケートでは約8割が『小学校で英単語を〝読む〟〝書く〟機会が(もっと)欲しかった』と回答したことが明らかになり、課題も浮き彫りに。
中学校
「授業を英語で行うことを基本にする」という方針(以降、All English=AEと呼ぶ)が2013年に示され、2018年には「(公立校の教員が)発話をおおむね英語で行っている」割合が2割弱(※2)。また、公立校の授業での生徒の英語による言語活動も「おおむね行っている」が2~3割(※2)と多くはなく、知識偏重傾向にあるようだ。
また、「授業中、生徒たちに質問や意見求めても誰も挙手せず、教室がシーンとしてしまうのはよくあること」とされ、教員たちは「日本語で意見を求めてもそうした気まずい状況になるのに、ましてや英語を介したコミュニケーションなど不可能だ」という考えに至ってしまうことがあるのだとか。よって、4技能をバラバラに学び、リスニングで「聞く」活動、本文を音読したり訳したりしながら「読む」活動、最後に英文を「書く」活動まで行き着ければいいほうで、「話す」活動まではなかなか達しないという状況が生まれているという(『中学英語4技能ペア&グループワーク』より抜粋・改編)。
高等学校
中学校より早い2009年にAEの方針が示されたが、2018年に「(公立校の教員が)発話をおおむね英語で行っている」割合は1・5割弱(※3)。そして中学校同様、コミュニケーション力を身に付けることを英語教育の目標としながらも、それにつながる取り組みが不足傾向に。公立校の授業における生徒の英語による言語活動は、「おおむね行っている」が普通科で2割弱と少ない(※3)。
※1…文部科学省『小学校外国語活動実施状況調査』(2012年)
※2…文部科学省『英語教育実施状況調査(中学校)』(2018年)
※3…文部科学省『英語教育実施状況調査(高等学校)』(2018年)
今後の展望
小学校
今年度から実施の新学習指導要領では、5・6年生(高学年)で行っていた「外国語活動」に近い内容を、3・4年生(中学年)が週1コマで学ぶことに。高学年では英語が教科化(週2コマ)。今まで中心となっていた「聞く」「話す」に「読む」「書く」が加わる。
中学校
来年2021年度から実施される学習指導要領では、「話す」の技能に新しく「やり取り」と「発表」の領域が設定されて、4技能5領域に。AEはそのままだ。
「生徒に使える英語を身に付けさせるには、実際に英語を『聞き』、繰り返し『読み』、『話し』『書く』ことが不可欠であることを、私たち教員は自らの経験で知っています。ですから、この改革を機に、教員の説明をできる限り少なくして、生徒が英語を使う時間を多くとるような授業が日本全国で爆発的に増えればと思っています」
(『中学英語4技能ペア&グループワーク』より抜粋・改編)。
高等学校
新しい学習指導要領の実施は再来年の2022年度で、中学校と同じくAEをそのままに、4技能5領域を総合的に学ぶことになる。目指すは、英語を通じて言語や文化に対する理解を深め、他者を尊重しながら、コミュニケーションを図ろうとする態度の育成。そして幅広い話題について、情報や考えを的確に理解し伝え合う能力の育成だという。センター試験に代わる新しい大学入試にいずれ英検やTOEIC®などの民間試験が併用されるかどうか―この動向も教育現場に影響を与える可能性が高そうだ。
お話を伺った方
『帰国子女アカデミー』 完全英語環境の学習塾
帰国子女教育のエキスパートで、帰国生とその家族の多様な悩みにも答え続ける。
参考文献
『中学英語4技能ペア&グループワーク』学陽書房、西林慶武著
公立中学教師の目から見た英語4技能の大切さと、子どもたちにそれを学ばせるアイデアをまとめた1冊。4技能の重なりを利用するワークなど、具体的な活動を数多く掲載している。
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