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帰国子女の親必読!|キーワードから読み解く日本の教育最新事情②|「アクティブ・ラーニング」の実施状況と今後の展望

先生から一方的に学ぶのではなく、子どもたちが主体的&対話的(=アクティブ)に学ぶという「アクティブ・ラーニング」。特に欧米で浸透していたこの学びが、近年、日本でも注目されています。実際の教育現場(小学校・中学校・高等学校)での取り組み具合はどうなのか、今後はどのように浸透していくと予想されるのか、アクティブ・ラーニングの専門家でもある小林昭文氏にお話を伺いました。

現在の実施状況

小学校

「実は文部科学省がアクティブ・ラーニングを打ち出す以前から、授業中にずっと黙って座っているのは小学生にはつまらないだろうと、児童の口や手を動かす活動を独自に取り入れている教員は数多くいました」(小林氏)。このため、今回の提唱前に比べて実施時間に大きな変化は見られないという。変わったのはその手段だ。「近ごろは教育の現場にもPCやプロジェクタなどが続々と導入されています。〝ITデバイスを活用しながらアクティブ(主体的)に学ぶ〟という授業はかなり増えている印象です」(小林氏)

中学校

「全国的に一番変化が見られるのは中学校の現場でしょう。文部科学省から教育委員会、教育委員会から学校長、学校長から各教員へと比較的スムーズにアクティブ・ラーニングの実践方針・方法が浸透していっています」(小林氏)。また、受け身が主流の教育を受けてきた多くの保護者の意識も近年の傾向に追いついてきており、授業中に子どもたちが意見交換のためにグループ席になることや、ワイワイ話すといったことへの抵抗が薄れつつあるという。「ただ、アクティブ・ラーニングの『質』と『実施頻度』にはまだまだばらつきがあります。特に公立校では都道府県、市町村の教育委員会の方針や経済力によって相当な差があり、課題となっています」(小林氏)

高等学校

「もともと高校の現場では『最終的に大学入試に合格させることが大事』という共通認識が根強くあり、戦後、文部科学省が幾度となく学習指導要領を変更しても、なかなか授業の大きな変化にはつながらなかったという歴史があります」(小林氏)。そこで文部科学省は「最終目標とされている大学入試を変えれば、授業も変わるだろう」と考え、2018年のPISA(※)での読解力低下という結果も後押しするかたちで、大学入試では記述式問題などを用いて読解力にも通ずる思考力・判断力・表現力を問う方針を打ち出した。現場には衝撃が走り、以来、「板書・ノートなし」「ペアワークやグループワークを多用する」といった授業が市民権を得始めたという。しかし今年3月の時点で、入試への記述式問題の導入は先延ばしに。「教育現場も生徒も振り回されていますから、早めに方針が固まるといいですね」(小林氏)

今後の展望

小学校

アクティブ・ラーニングの実施は拡大していくだろう、というのが小林氏の考えだ。これには、2022年度をめどにスタートする高学年での『クラス担任制』から『教科担任制』への移行が影響するという。「クラス担任一人がほとんどの教科を教えるかたちから、教科の専門教員が教えるかたちへと変われば、各教員が専門教科に注力できます。教え方も児童からの意見の引き出し方も、より洗練されていくでしょう」(小林氏)

中学校

「中学校においては、小学校でのアクティブ・ラーニング型授業に慣れている子どもたちが毎年入学し続けるわけで、授業を受ける側の意識は年々主体的になっていくでしょう」(小林氏)。ただし課題もある。中学校では得るべき知識量が格段に増えるため、小学校までの方法をそのまま続けていたのでは規定の履修範囲を学びきれない可能性があるのだ。「この接合が上手くいけば、成績アップ、進度アップ、授業中の居眠り解消などが期待できるはずです」(小林氏)

高等学校

大学入試での記述式問題の導入が先延ばしになったことなどを受けて、授業改革の熱が冷めるのではないかと危ぶむ向きも。しかし私立大学では記述式問題の出題が増加傾向にある。さらにはアクティブ・ラーニング推進を盛り込んだ新しい学習指導要領が再来年の2022年度から完全実施に。また、今の時代の流れにおいて主体的・対話的な力を持つことは不可欠だという意識も高まっている。「アクティブ・ラーニングの必要性が低くなることはないはずです」(小林氏)

※Programme for International Student Assessment。15歳児を対象にした国際的な学習到達度調査のこと。2018年、日本は読解力の分野で参加79カ国・地域中15位と過去最低を記録。前回(2015年)の8位から急落した

 

●親子でできるアクティブ・ラーニング練習

さて小林氏によると、アクティブ・ラーニングによって習得を目指す力の1つである「自身の考えを整理し、ディベートする力」は家庭でも身に付けられるとのこと。下に掲載したシートを使いつつ、「身近な選択」について親子で考えてみましょう。

シートの使い方

①2択で悩んでいる項目をひとつピックアップ

「新しいゲーム機を買う(A)、買わない(B)」「習い事を続ける(A)、やめる(B)」など、大小問わず子どもが2択で迷っている項目をひとつピックアップ。下の「2択で悩んでいる項目」の欄に書く。「明日のおかずは~」など項目は親自身が迷っているものでもOK

②プラス&マイナスポイントを親子で列挙

Aを選んだ場合とBを選んだ場合のそれぞれで、プラスになること、マイナスになることを考えて親子別々で箇条書きに。その後、それらを見比べて意見を出し合い、「気づき・感想」の欄にまとめて書く。時間がかかりそうな場合は各自の宿題にして、翌日以降に続きを進めるのもアリ

③親子で話し合って結論を出す

最後に親子であれこれ話し合いをして結論を出し、それを書き出せば完了。どちらか一方を選ぶのではなく、どちらも活かす折衷案を導き出すのも◎

お話を伺った方

清水賢司氏

小林 昭文氏『アクティブラーニング入門』著者

元大学教授、元公立高校教諭。株式会社AL&AL研究所代表。アクティブ・ラーニング型授業の開発・実践、理論研究、指導者育成を行っており、関連著書や監修書は10冊以上。

イラスト/茂苅恵

 

 

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