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帰国子女の親必読!|キーワードから読み解く日本の教育最新事情①|「アクティブ・ラーニング」とは?

小中高での学びが今、大きく変わりつつある

グローバル化やIT化が進み、ヒトやモノやカネや情報が国境を越えてますます高速に行き交うだろうこれからの時代に向けて「生きる力」を育てようと、文部科学省は学習指導要領を改定。今年度の小学校を皮切りに、中学、高校と順次全面実施していく予定です。また、大学入試センター試験は今年1月の実施をもって廃止され、来年1月からは思考力・判断力・表現力などをより重視する新しい大学入試(大学入学共通テスト)がスタートします。この影響もあり、日本全国の小学校から高校では、授業のなかでさまざまな取り組みが行われ始めています。

今号では、そんな小中高の教育現場で話題となっている事柄を、「アクティブ・ラーニング」「EdTech」「STEM教育」「英語4技能」というキーワードを軸にピックアップ。これら4つを通して、日本の教育の今とこれからを探るべく、それぞれの専門家にお話を伺いました。

「先生に教わる」から「子ども自身で学ぶ」への転換 ~アクティブ・ラーニング~

授業から大幅に「説明の時間」が減る

新しい学習指導要領で最重要視されているのは、子どもたちが主体的かつ対話的に学ぶ〝アクティブ・ラーニング〟という視点をベースとした授業改革だ。先生が1から10まで説明して黒板に書き、子どもたちはそれをノートに書き写す―保護者世代には受け身のイメージが強い日本の授業だが、「これからは子ども主体の活動時間をしっかり確保することが大事にされます」とアクティブ・ラーニングの研究家である小林昭文氏は話す。

小林氏によると、アクティブ・ラーニング型の授業の特徴はふたつ。ひとつめは、先生の説明が端的になり、板書も少なくなること。
「説明は少し足りないくらいのほうが子どもの好奇心や学習意欲を刺激でき、板書を書き写す作業は減ったほうが子どもが話に集中できるとされています。海外で現地校やインターに通うお子さんにとっては、ごく自然な授業の方法かもしれませんね」(小林氏)

説明について考える「演習」が授業の要に

特徴のふたつめは、説明後に示されたテーマについて、子ども自身で調べる時間やグループワーク(相談やディスカッション)をする時間がたっぷりとられること。どの教科においてもこの演習がアクティブ・ラーニング型の授業の要になるという。

「例えばディスカッションの場合、テーマについてまずは個々で考えて、その後にグループでの話し合いを行います。その際、先生はグループ内でコンセンサス(合意)を取ることに挑戦させ、多数決やジャンケンはなしにします。すると、一人だけで考えたときよりも建設的な結論が出ることが多く、話し合いや協力の効果を実感できるのです」(小林氏)

演習後も、子どもたちが主体的に授業を振り返る。

「内容をしっかり理解できたか、学習態度は適切だったかなどを、子どもたち自身が考えて書き出したり発表したりします。この過程でも、さまざまな気づきを得られるでしょう」(小林氏)

アクティブ・ラーニングのここがすごい!

①自分で考える力がメキメキと育つ

答えを教わるよりも、自分で答えを見つけ出すほうが理解度は上がり、考える力も身に付く。また試行錯誤を経て答えを導き出す喜びや知識がつながる感動は「考えてみよう」という主体性の源に。

②人間関係を築く練習になる

演習ではさまざまな相手と交流するため、自分の意見をどう他者に伝えるか、自分と価値観の異なる人の意見にどう対処するかといったコミュニケーションの基礎を学ぶことができる。

③得手不得手が浮き彫りになる

演習を通して「自分はみんなの意見をまとめる役に向いているかも」「自分は説明が上手にできないな」というように自分の得手不得手がわかり、それが子ども自身を成長させる大きなヒントになる。

④先生を意識せず思考を開放できる

先生主体の授業では先生好みの意見を言うことに意識が向きがちな子どももいるが、この授業では課題に取り組む姿勢や主体性が重視され、どんな意見も満点になるため、自由な思考を得やすい。

⑤新時代に必要な総合力が身に付く

1~4のメリットが合わされば知識だけでなく思考力や問題解決能力、コミュニケーション能力など、これからの時代を生き抜くために必要な総合力を身に付けることができる。

お話を伺った方

清水賢司氏

小林 昭文氏『アクティブラーニング入門』著者

元大学教授、元公立高校教諭。株式会社AL&AL研究所代表。アクティブ・ラーニング型授業の開発・実践、理論研究、指導者育成を行っており、関連著書や監修書は10冊以上。

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