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特集 |日本でインターナショナルスクールを卒業すると、どうなる? 全6回—④ —中等部編—

中等部卒業後の進路選択と注意点

「海外で受けた教育を継続できる」「英語力をもっと伸ばせる」等々、海外から日本に帰国後、我が子がインターナショナルスクールに通うメリットは数多くあります。でも日本でインターナショナルスクールに通うということは、教育制度上は、日本で外国人学校に通うのと同じこと。卒業後に向けて注意すべき点はいろいろとあります。

今特集では、そうした注意点を日本のインターナショナルスクール事情に詳しい国際教育評論家の村田学氏にヒアリング。また、日本にあるインターナショナルスクール6校に進学サポートや実際の進路について伺いました。

第4回目の今回は、日本でインターナショナルスクールの中等部を卒業した後によくある進路を3通り紹介しつつ、その進路に進むメリットと注意点をお伝えします。

中等部卒業後によくある進路3つ

  • 日本のインターナショナルスクール(高等部)
  • 日本の私立高校
  • 海外のボーディングスクール

中等部卒業後の主な進学先のメリットと注意点

日本のインターナショナルスクール(高等部)

メリット
 質の高い学びや世界各国・地域の大学への挑戦権を得やすい。「インターの高等部では自身の興味や習熟度に合わせて、多種多様な選択肢のなかから好きな科目を選んで探求的に学べる傾向が特に強いので、純粋に、学ぶ楽しさややりがいを強く感じられるはずです」(村田氏)。

注意点
 高等部では「日本語で学ぶこと」からより遠ざかることに。「『日本語で学ぶ日本の大学に進学して、医師や弁護士、公認会計士、教師など、国家試験が日本語で実施される職業に就きたい』と心が決まっている場合は、塾や家庭教師などのフォローを受けて、対策をしていく必要があるでしょう」(村田氏)。

日本の私立高校

メリット
「日本人の性質や日本の学校文化を知ることができます。日本の大学への進学を考えている場合は、この段階で、日本語による学びに慣れることも可能です」(村田氏)。インターナショナルスクール卒業生の受け入れ体制は学校ごとに異なるが、近年は国際生枠や外国生徒枠で受験できるケースも増えてきているという。「国際化の折、英語力の高い生徒に期待する学校は多いと聞きます」(村田氏)。

注意点
 インターナショナルスクール卒業生は個性が強い、という先入観を持たれやすいという。「それを避けたいと考えるのなら、多様性を重視している高校、国際コースのある高校などを選ぶのがおすすめです」(村田氏)。

海外のボーディングスクール

メリット
 どの国・地域を選んだとしても、日本人はマイノリティ。「そうしたなかで、『自分はどのような人間か』と内面を掘り下げていくと、自身のセールスポイントを見つけられます」(村田氏)。学力の面では、一般的に、日本人生徒は理数系の土台が強いのだという。「理数系の科目でトップクラスになることがあり、進学先にエンジニアリング、プログラミング、医学を学べる大学を学校からすすめられることもあります」(村田氏)。

注意点
「生徒構成が国内インターと異なるため、孤立してしまうケースも見られます。勉強とクラブに打ち込めるメンタルの強さが、そこで生き抜くカギになります」(村田氏)。

実際の進路を見てみよう

KIU ACADEMY-KYOTO INTERNATIONAL UNIVERSITY ACADEMYの例
中等部卒業後の進学実績(近年)


【その他】近隣の私立高校(立命館宇治高ほか)、国際的な教育を受けられる高校(同志社国際高ほか)など。

 在籍可能学年はG1(初等部)~G12(高等部)までで、小中高一貫校のため、中等部卒業後は多くの生徒が同校高等部へ。大学は海外と国内が半々。海外ならアメリカ(Univ. of California, Los Angeles、 Univ. of Southern California、Univ. of Nebraska–Lincoln、Rutgers Univ.ほか)、イギリス(King’s College Londonほか)、カナダ(The Univ. of British Columbiaほか)、中国、オーストラリアなど。日 本国内は名古屋大、国際基督教大、慶應義塾大、早稲田大、上智大、テンプル大ジャパンキャンパスなど。

Nishimachi International Schoolの例
中等部卒業後の進学実績(円グラフは2015~2019年期生、進学先学校名は2021年現在)


【日本のインター高等部】American School in Japan、Yokohama International School、St. Mary’s International Schoolなど。
【日本の高校】都立日比谷高、国際基督教大学高など。
【その他】アメリカ(The Taft School、CateSchool、The Lawrenceville Schoolほか)など。

 在籍可能学年はK3(年長)からG9(中等部)までで、幼小中一貫校のため、初等部卒業後は約40% の児童が同校中等部へ。中等部卒業後は多くの生徒が日本にあるインターの高等部へ。アメリカのボーディングスクールへの進学者も毎年必ずいる。この他、イギリスやスイスなどの現地高校進学者も。

こんなときはどうする?Q&A

Q. 飛び級や留年をした場合、その先の進路スケジュールに影響はある?

A. 日本ではまれ。身構えなくてOK!

 日本にあるインターナショナルスクールでは、海外の学校で頻繁に見受けられる学年単位での飛び級や留年はほとんどない。大学で飛び級制度を実施している日本の大学が8校のみ(2022年8月時点)と極めて少ないことも関係しているのだろう。これゆえ、飛び級や留年にも、その先の進路スケジュールにも、身構える必要はなさそうだ。

 ただ、近年は日本にあるインターナショナル全体が“ディファレンシエーション(個々の区別)”を意識した教育を展開。教科単位での飛び級や留年は珍しくなく、「ある教科で学習能力に長けている生徒は、上級生レベルの教材を活用して学ぶことも可能」(Aoba)、「中高等部の能力別でクラス分けされる教科では、上級レベルで学ぶケースや再履修になるケースも」(KIU ACADEMY)とのこと。「個々の興味を保つために、生徒それぞれに合う独自の課題で学ぶこともできる」(Nishimachi)という例もあり、インターナショナルスクールならではの学びやすさが伺える。

Q. 進路に迷いが…。
日本のインターでは、生徒の進路をどうサポートしているの?

A. カウンセラーやアドバイザーが在籍。保護者向けのサポートも。

 今回お話を伺ったインターナショナルスクールによる、中等部でのサポートは次の通り。

「同法人内の高等部IB-DP課程に接続。専任カウンセラーが生徒と対話を重ね、グローバルな進路も考えられるようにしています」(Osaka YMCA)

「ガイダンスやカウンセリングを適宜行い、多くの保護者が見落として後々苦労することなどをなるべく早めに伝えるようにしています」(Tokyo YMCA)。

「学校選びから推薦状まで、アドバイザーが個別にサポート。毎年、秋には『ハイスクールエクスポ』を開催しています」(Nishimachi)。

次回は、高等部編をお伝えする。

お話を伺った方

村田学氏

国際教育評論家 村田学(むらた・まなぶ)氏

国際バカロレアの教員向けPYPの研修を修了した国際教育評論家で、プリスクール元経営者、幼小中インターナショナルスクールの共同オーナー。ウェブサイト「インターナショナルスクールタイムズ」(https://istimes.net/)の編集長。アメリカで生まれ、6歳で帰国して英語力を丸ごと失った、という苦い経験を現職に活かしている。

協力校(五十音順)/Aoba-Japan International School、Osaka YMCA International School、KIU ACADEMY-KYOTO INTERNATIONAL UNIVERSITY ACADEMY、Tokyo YMCA International School、Nagoya International School(学校法人名古屋国際学園)、Nishimachi International School

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