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私立大学に入学金納入時期延長を求める(後編)

昨日は「(私立大学に対して)入学納入時期延長を求める学生有志の会」が行った署名活動と、署名の文部科学省への提出についてお伝えした。本日は彼らの発足のきっかけ、活動に対する世間の反応や、有志の会の今後の抱負について紹介していこう。

入学金問題で進路をあきらめる人をなくしたい

有志の会の発起人は東京都内の大学4年生・五十嵐悠真(いがらし・ゆうま)さんだ。発起のきっかけは、友人や後輩から入学金問題を苦にして進路をあきらめるケースを聞いたり、入学しなかった大学の入学金を払ってもらったことで親に申し訳ない気持ちを強烈に抱いたりするケースなどを多々聞いたこと。そういった人たちの力になりたいとの思いにかられ、2021年3月有志の会を立ち上げた。ほどなくしてオンライン署名収集サイト「change.org」で署名活動も開始した。

署名活動を開始した3月下旬から4月上旬は、彼らが予想していた以上に多く大きな賛同の声があがった。

~賛同の声の例~

  • これを払ったら、本当に入学した学校の『授業料』が払えなくなります
  • (入学金は)まるで悪徳商法のようだ
  • 入学もしない大学の入学金を大学側が受験生から徴収するのは世界に類を見ない奇異な制度

こうした多くの声を聞くにつれ、ほかの大学の合格発表前に入学金納入時期が来てしまう現状に多くの人が苦しんできたのだと実感したという。

記者会見後は心ない批判の声も寄せられた

しかし、4月下旬に文部科学省で記者会見を行ったあとは、一転して批判の声も多く耳に届くようになった。大学の経営面を考えるような正当な反論ならともかく(有志の会では、国に高等教育への支出増や学生個人への支援強化も謳っている)、「この学生たちは自分が入学金を払ってもらえずに意に沿わない進学をしたから、こんなことを言っている」とか「わがまま放題言って、大学で何を勉強してきたんだ」とか、事実とはまったく異なる個人への誹謗中傷もDM(ダイレクトメッセージ)などでひっきりなしに寄せられた。

活動を進めていくうえでどうしてもDMの通知を拒否できない面もあり、有志の会発起人・五十嵐さんは「少し病んで、活動の進行が一時足踏みして、文科省への署名提出がいくらか遅れたかもしれません」というほどだ。

それでも、活動を立ち上げた当初の気持ちを奮い起こし、支援の声に背中を押され、文部科学省への署名提出にこぎつけたという。

声を挙げられない人たちのために代弁したい

6月3日に丹羽秀樹文部科学副大臣に署名と要望書を提出したあと、さらに10日には立憲民主党の枝野幸男代表にも署名と提言書を提出した。今後も全政党への提出を予定しているほか、日本私立大学協会や日本私立大学連合会への提出を目指して活動を継続していくという。

五十嵐さんは有志の会の今後の抱負について次のように語る。

「まずは我々が主張している、入学金の納付締切日の延長などの提言が実現されるように活動を続けていきます。就学支援制度にしても、入学金や授業料の免除は入学後の4月から始まるので、入学金を収める時期には間に合いません。貧困家庭を対象にしたいろいろな支援制度も、実情と政策がかみ合っていない面が多々あります。それらの点についても提言を加えていきたい。

また、そもそも大学入学金は大学に行く人しか関係のない話です。世の中には家庭の事情で中学・高校の時点でもう大学などまったく視野に入ってこない人たちもいます。すべての人に高等教育の機会が均等に与えられる世の中になってほしい。そのために、苦境のなかで声を挙げることさえできない人たちのために代弁していきたいと思っています」

6月10日、立憲民主党に署名と提言書を提出

(取材・文/大友康子)