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「アート」×「英語」で子どもたちの好きを育む!(前編)

彫刻家と英語講師の夫妻にインタビュー

近年、STEM教育に「A」を加えたSTEAM教育が注目されている。STEMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字をとった言葉だが、これら理数系の力を身に付けた子どもたちが能力を存分に発揮するには創造力や表現力も必要だということで、A=Art(芸術)を加えたSTEAMという言葉が生まれた。子どもの教育において重要度が高まっている「アート」と国際社会では不可欠な「英語」を、自由なスタイルで教えている夫妻がいるので紹介したい。

子どもたちの“アート体験基地” 「ORSETTA BIANCA(オルセッタビアンカ)」を始めた高橋智力(たかはし・ともりき)氏と高橋奈々恵(たかはし・ななえ)氏だ。智力氏はイタリアにスタジオを持つ彫刻家で、奈々恵氏は英語講師の経験がある。現在は日本で3人の子どもたちと暮らしながら、ふたりでオルセッタビアンカを主催。場所は東京都板橋区と埼玉県所沢市で、アートワークショップは幼児~小学校4年生くらいまで、英語ワークショップは小中高生から保護者までを対象にレッスンを行っている。

スイスとイタリアでアートを学んだ智力氏

――それぞれの海外経験と現在のお仕事について教えてください。

高橋智力氏(以下、智力):高校生の時にスイスのジュネーブに留学して、北イタリアのトリノへ移り、イタリア国立美術大学アカデミア・アルベルティーナを卒業しました。在学中からトリノに自分のスタジオをかまえ、彫刻の制作拠点にしています。コロナ禍の前はイタリアと日本のスタジオを行き来していましたが、最近は行けていませんね。また、幼稚園の先生にアートへのアプローチの仕方や指導法をレクチャーしたり、園児たちと一緒にアート制作をしたりもしています。

高橋奈々恵氏(以下、奈々恵):私は大学卒業後、アメリカで10年ほど暮らしていました。実家がかつて都内で洋服店を営んでいて、母がアメリカに買い付けに行っていたので、それを私が引き継いだんです。帰国後は子育てをしつつ、大手英会話学校で講師として働いていた時期もあります。

アメリカで働いてわかった伝える気持ちの大切さ

――海外の経験が現在のお仕事と考え方にどう役立っていると思いますか?

奈々恵:英語に関しては、アバウトでOK、ということが海外経験で身に付きました(笑)。アメリカの人々は、相手が何を言おうとしているのかな、ということに神経を向けてくれるから、こちらがコミュニケーションをとる気さえあれば話を聞いてくれるし、友だちにもなれるんですよね。私はバイヤーだったから、気に入ったお店を見つけたとき、だめもとでオーナーさんに話をしにいきましたが、ほぼなんとかなりました。だから、英会話のレッスンに来てくれている小中学生の生徒にも、「まずは言いたいことを知っている単語を使って自分なりに言ってみましょう」と声をかけることが多いです。それで相手に伝わると、英語を使うことが楽しくなってくるようです。ただ、シャイな生徒のときは、音読などをして少し自信をつけてもらうこともあります。

智力: 僕がスイスに留学したのは1991年ですが、当時の日本は経済が爆発的に成長していた勢いのある時代でした。一方、その頃のヨーロッパはすでに成熟社会で、がむしゃらに頑張ったところで爆発的な成長はないですよ、ということで、それぞれの国が何を大事にしていくかを考えて、その考えに基づいた教育をしていくことになったんです。僕はイタリアへ行き、成熟した社会でどう過ごすかを肌で学んだんですね。今、すでに日本は爆発的な成長は終わっていて、これからは何が大事なのか、ということが教育の現場でも話題に上りますが、僕は先にその過程を体験してきたので、その体験が何らかの形で生かされていると思っています。

※明日掲載の<後編>に続く

(取材・文/中山恵子)
写真提供/高橋智力・高橋奈々恵

リトルクリエイター達のためのアート体験基地
「ORSETTA BIANCA(オルセッタビアンカ)」www.orsettabianca.com

高橋智力(たかはし・ともりき)
彫刻家。 高校生の頃にスイス、ジュネーブへ留学。北イタリアのトリノへ移り、イタリア国立美術大学アカデミア・アルベルティーナを卒業。在学時よりトリノにスタジオをかまえ、イタリアと日本を行き来しながら作品を制作中。イタリアや日本の幼稚園にて、先生や子どもたちにアートの世界観を使ったアプローチを提案、実践。

高橋奈々恵さん

高橋奈々恵(たかはし・ななえ)
成城大学文芸学部芸術学科卒業。アメリカでバイヤーなどの仕事をしながら10年間生活。帰国後は大手英会話学校の講師などを務めた後、独自に英語レッスンを開始。子どもたちに教えるほか、バイリンガルで我が子を育てたいママ向けにレッスンも行っている。