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帰国前に知っておきたい生活情報|一時帰国中の人間ドック

一時帰国中、健康状態をチェックするために受けておきたいのが人間ドック。受診すると、どんなことがわかるのでしょうか。日暮里健診プラザ予防医学管理センター副センター長の神山剛一(かみやま・ごういち)先生にお話を伺いました。

健康診断や人間ドッグの問い合わせ・予約

まずは被保険者の属する会社の人事部などに確認

日本語で安心の空間かつ充実した設備で受けられるとして一時帰国者の受診率が高い健康診断と人間ドック。どちらも一時帰国の際、夫など被保険者だけでなく、被扶養者となる家族の受診機会を設けている健康保険組合があり、費用が低額負担や免除になるケースも。内容や手続きはそれぞれ異なるので、まずは夫の会社の人事部などに問い合わせるといいだろう。

確認や手続きには時間がかかることがあるため、問い合わせは一時帰国の2〜3カ月前(または一時帰国決定後すぐ)にするのが望ましい。

人間ドックを受診すると何がわかる?

健康診断と人間ドックの違いは?

一時帰国した際に、「日本で身体全体の健康状態をチェックしておきたい」という人は少なくないだろう。「会社の健康診断で十分」とする向きもあるが、年間1万件以上の内視鏡検査などを行い、がんや動脈硬化をはじめとする生活習慣病の予防や早期発見に努める「日暮里健診プラザ予防医学管理センター」の副センター長、神山剛一(かみやま・ごういち)氏は、「できれば人間ドックも受けるのが望ましい」と言う。

そもそも、企業などが行う健康診断と人間ドックとにはどんな違いがあるのだろうか?

健康診断としてよく知られるのは、事業者が労働者に対して実施することが法律で義務付けられる「一般健康診断(一般健診)」だ。一年に一回実施する「定期健康診断」のほか、雇用時に実施する健康診断、海外に6か月以上派遣する労働者や帰国後に日本国内の業務に就かせる労働者に対して行う「海外派遣労働者健康診断」などが実施されている。

一方、各市町村が実施する健診には、40歳から74歳までの国民健康保険の被保険者を対象とする「特定健康診査(特定健診)」のほかに、健康増進法に基づいて住民を対象に実施するがん検診などがある。

人間ドックも健康診断の一種だが、法的な義務はなく、個人が任意で受けることができる。検査の枠組みは一般健診と同じだが、大きく異なるのは、検査項目の多さだ。検査内容は施設によって異なるが、総じて健康診断で行われる検査のほかに、肺機能検査や腹部超音波(エコー)検査などを実施し、血液検査では炎症性反応や感染症など、より多くの項目について診断する。

さらに、希望する人にはオプション検査も用意されており、自覚症状のない病気や兆候を発見し、早期治療や予防に役立てることが可能になるのだ。

人間ドックの基本的な検査

人間ドックの内容や費用は施設によって様々だ。半日や一日など日帰りで受診できる基本的なコースから、一泊二日など宿泊型コースを用意している施設も多い。

基本的な人間ドックの例として、半日で受診できるコースをみると、身体計測、血圧、心電図、眼科(視力、眼圧、眼底検査)、聴力、呼吸機能、胸部X線、胃部X線(バリウム)あるいは胃部内視鏡(胃カメラ)、腹部超音波(エコー)、尿検査、便検査、血液検査、内科診察が実施されている(下記参照)。

人間ドックのオプション検査とは?

 多くの人間ドックの健診施設では、基本的な検査ではカバーできない病気の発見や予防に繋がるオプション検査を用意している。男女共通で、脳検査、大腸内視鏡検査、胸部・内臓脂肪CT検査、男性対象の前立腺がん検査、女性対象では、乳がんや子宮がんなどの発見や予防に役立つマンモグラフィ、乳房超音波検査、子宮頚部細胞診などがある。オプション検査の内容は施設によって異なり、基本的な人間ドックの検査に加えて、個別にオプションを選択できる施設もあれば、基本的な検査とオプション検査を組み合わせて、例えば、「レディースドック」「メンズドック」といった名称で実施するところもある。主なオプション検査は以下の通りだ。

主なオプション検査

■脳検査

頭部のMRIやMRA検査、頸部の超音波検査などで、症状が出ていない脳梗塞や脳動脈瘤、脳腫瘍、頭部に血流を送る頚動脈の状態などを診断する。

■大腸内視鏡検査

大腸、直腸、小腸の一部を内視鏡(大腸カメラ)を用いて検査し、ポリープやがんなどの有無を診断する。

■胸部CT検査

胸部の断層(輪切り)画像を撮影し、肺がんや肺炎、肺結核、肺気腫などの肺の疾患や動脈瘤や心不全、胸水貯留などの有無を診断する。

■内臓脂肪CT検査

内臓脂肪の面積を測定し、メタボリックシンドローム(内臓脂肪型肥満をきっかけに脂質異常、高血糖、高血圧となる状態)を診断する。

■女性対象検査

乳房専用のX線撮影で、乳がんや乳がんの初期症状である微細石灰化などを診断する「マンモグラフィ(乳房X線)検査」、乳房内のしこりなどの有無を診断する「乳房超音波(エコー)検査」、子宮頸部の粘膜から細胞を採取し、がんの有無を判定する「子宮頸がん検査」のほか、骨粗しょう症の進行度を測定する骨密度検査などがある。

■男性対象検査

血液検査による前立腺腫瘍マーカー(PSA)検査などで、前立腺肥大や前立腺がんなどの疾患を判定する。

解説|人間ドックの検査でわかること

人間ドックの基本検査にはどんな項目があり、何がわかるのか、オプション検査の種類と内容についても解説します。

人間ドックの基本的な検査
身体計測 体格指数(BMI)を測り、肥満傾向などを診断
血圧(最高・最低)測定/th> 心臓のポンプ機能や血管の状態が正常かどうかを診断
眼科検査 眼圧測定:眼球の中にある房水の圧力を測り、高眼圧症または緑内障などを診断
眼底検査:目の奥の状態から、動脈硬化の程度や高血圧、糖尿病による眼の合併症、緑内障・白内障の有無を診断
聴力検査 主に、1000Hz(低音域)と4000Hz(高音域)で、聴力を診断
心電図・心拍数 心臓の筋肉に流れる電流を体表面から記録し、不整脈の有無や心筋の状態や血液循環などを診断
胸部X線検査 胸部X線検査胸部のX線画像から、肺炎、肺結核、肺がん、肺気腫、胸水、気胸など、呼吸器の疾患の有無やその程度を診断
尿検査 尿蛋白、尿糖、尿沈渣、尿潜血、尿比重を調べ、腎機能などに異常がないかを診断
便検査(2日法) 便潜血を調べ、消化管の出血性の病気や大腸ポリープ、大腸がんなどの可能性を診断
肺機能検査 肺機能検査肺活量を測定し、気管支や肺の疾患の有無を診断
腹部超音波(エコー)検査 肝臓、すい臓、腎臓に腫瘍があるか、胆のうには胆石などがあるかを調べる
胃部(※) X線検査 食道から胃、十二指腸までのX線画像から、十二指腸のポリープ、潰瘍(かいよう) やがんなどの有無を診断
内視鏡検査 胃カメラにより、食道・胃・十二指腸の内腔を観察し、食道がん、逆流性食道炎、胃炎、胃潰瘍、胃がん、ポリープ、十二指腸潰瘍などの有無を診断
血液検査 肝・胆機能、脂質(コレステロールや中性脂肪など)、腎・膵機能、貧血、炎症性反応、糖尿病・痛風、炎症性反応(細菌・ウィルス感染、がん、炎症など)、感染症(梅毒、肝炎など)などを診断

※…通常、X線か内視鏡のいずれかをおこなう

オプション検査の例
脳検査(頭部MRI・MRA) MRI 検査:脳の断面画像を写し、脳梗塞や脳腫瘍などの有無を診断
MRA 検査:脳の血管を立体画像として写し、動脈瘤などの有無を診断

脳梗塞や心筋梗塞にかかった家族がいる人などにおすすめ

大腸内視鏡検査 内視鏡カメラで、大腸の中を観察し、大腸がんの発見や粘膜の状態、ポリープ、潰瘍などの有無を診断。

大腸がんの家族歴がある人のほか、便に血が混じる、便が細くなる、下痢と便秘を繰り返す症状がある人などにおすすめ

胸部CT検査 胸部の断層写真を撮影し、肺がんをはじめとする肺の疾患や気管支などの病変の発見につなげる

喫煙歴がある人などにおすすめ

内臓脂肪CT検査 内臓脂肪を測定して数値を把握することで、生活習慣病の予防に役立てる

内臓脂肪やメタボリックシンドロームが気になる人におすすめ

女性対象 乳がん検査(マンモグラフィ・乳腺エコー):乳がんや石灰化、乳腺や乳房の病変などを診断
子宮頸がん検査:子宮がんを診断

定期的な検査がおすすめ

男性対象 採血検査によるPSA(前立腺特異抗原)の測定と、前立腺MRI検査などによって前立腺内にがんなどがあるかどうかを診断

前立腺がんの家族歴がある人などにおすすめ

記事監修

神山 剛一氏

日暮里健診プラザ
予防医学管理センター
副センター長・医学博士
神山 剛一(かみやま・こういち)氏