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2018年中学入試結果速報!日能研が考える重大ニュース

明治維新以来ともいわれる規模での大学入試改革を受け、私立中学入試も大きく変わっています。そこで、中学入試に詳しい専門家に、2018年度の傾向を伺いました。

6年後の姿を分かりやすく伝えた学校が人気高まる

2018年度の中学入試結果について、中学受験塾『日能研関東 関東中学情報部』部長の長谷川信誓(のぶちか)氏は次のように分析する。

「今春、中学受験を迎えた保護者世代は、主に1970年代生まれ。大卒でも就職が難しいといわれた氷河期時代を経験し、大学卒業以降も先の見えない不景気な世の中で暮らしてきました。それゆえに学校選択は、大学進学実績だけではなく、6年間の学校生活をどう過ごし、6年後の着地点をどうイメージするかという視点で行われました。

また価値観が多様化する時代において各校は、入試においても様々な工夫を凝らしており、海外入試、英語選択入試、得意や才能を生かす算数などの1科目入試、思考力入試、公立中高一貫校を意識した合科型入試など、多彩な入試が乱立しているのが昨今の特徴だという。

そうした中で、保護者の立場に立ち、“多様性”と“分かりやすさ”の両面を際立たせ、我が子の成長目標を“点”でなく“線”で見せられた学校が、2020年の大学入試改革による不安を払しょくさせ、応募者を伸ばしています。」

首都圏の中学受験者数推移 ※日能研関東調べ

小学校卒業生数 受験者数
2008 295,792 61,000
2009 303,284 64,200
2010 303,493 61,500
2011 306,747 60,400
2012 305,329 59,400
2013 305,185 57,600
2014 303,594 57,700
2015 300,391 55,600
2016 297,634 56,400
2017 291,961 57,000
2018 283,749 57,300
2019 292,781

2019年以降の動き

  • 『成城中学校』…完全中高一貫化(高校での募集停止)
  • 『桐蔭学園中等教育学校』…共学化(男子部・女子部の募集を停止し、中等教育学校に一本化)
  • 『細田学園中学校(埼玉)』…2019年4月開校
  • 『さいたま市立大宮国際中等教育学校』…2019年4月開校
  • 『慶應義塾湘南藤沢中等部』…2019年入試より、帰国生一般生とも、①国算理社、②国英算のいずれかを選択。

「2018年中学入試」日能研が考える重大ニュース

首都圏エリア(東京・神奈川・千葉・埼玉)

首都圏エリア(東京・神奈川・千葉・埼玉)

1位 3年連続、中学受験率上昇

2018年、首都圏で小学校を卒業生した者の人数はおよそ283,000人と底を打った。しかし、2020年度からの大学入試改革やますます進むグローバル社会への対応、私立大学の定員数の厳格化などが追い風となり、2018年度の中学受験率は20.1%(57,300人)と3年連続上昇に転じた。

2位 共学化した学校が人気に

2018年度4月から共学化する『青山学院横浜英和中学校』や『八雲学園中学校』、海外大学進学に向けたコースも設置した『文化学園大学杉並中学校』が高い人気を見せた。また2019年共学化の『桐蔭学園中等教育学校/高等学校』では、特に中等教育学校で高倍率。

3位 早稲田・慶應のブランド校人気

大学入試改革を2年後に控え、男子は昨年に続き『早稲田』が人気。附属校の『早稲田大学高等学院・中学部』、系属校の『早稲田大学実業学校・中等部』ともに応募数を伸ばした。メディア効果の高かった『慶應義塾中等部』ほか、『慶應義塾・普通部』は昨年からの揺り戻しもあり応募者数増。

4位 大学の系属・附属校が人気

『明治大学付属明治中学校』ほか、『明治大学付属中野中学校』、『明治大学付属中野八王子中学校』は同大進学率の高さを背景に難化。武蔵野・多摩地区では『法政大学中学校』『中央大学附属中学校』『帝京大学中学校』で応募者数増。グローバルクラス新設の『国学院大學久我山中学校』も大幅増。

5位 グローバル系で帰国生入試受験者数増

次世代の父親に圧倒的な支持を受けるグローバル系の代表は、『渋谷教育学園渋谷中学校』『広尾学園中学校』。それに続くのは、理系教育も強化する『三田国際学園中学校』と国際バカロレア教育の『開智日本橋学園中学校』。ともに帰国生入試を除き、一般での高校募集の廃止を決めた。

6位 海外大学進学を見据えた学校が人気

『渋谷教育学園幕張中学校』は圧倒的な海外大学実績をもとに、帰国生&一般入試とも3年連続で受験者数増。実績を伸ばした『開成中学校』をはじめ、『かえつ有明中学校』、『宝仙学園理数インター』、海外大学に指定校推薦を持つ『関東学院六浦中学校』も人気。

7位 理系にも力を入れた学校の人気増

『浅野中学校校』など理数教育も強化する学校の人気が増。また『東京農業大学第一高等学校中等部』や『東京都市大学等々力中学校』では理系女子の受験者数増。また『東京理科大学』と連携し2019年度より共学化をすすめる『横浜富士見丘学園中等教育学校』も注目を集めた。

8位 都内難関校受験者の都外併願増える

地元志向の強い千葉県では、県外生が都内難関校と併願する流れがさらに強まり、『市川中学校』などで進学先としての強さを見せた。また埼玉県では、理数選抜の出題で関心を高めた『星野学園中学校』、女子校の『浦和明の星女子中学校』などで都内からの併願者数が増えた。

9位 国立中学の応募が下げ止まりか

年々減少傾向が続いていた国立校の応募者数は下げ止まった様子。『筑波大学』への推薦設置で話題になった『お茶の水女子大学附属中学校』や、『東京学芸大学附属世田谷中学校』、『横浜国立大学教育学部附属横浜中学校』などが外交的に説明会を行うようになってきたことも影響していると思われる。

10位 公立一貫校受験者数ゆるやかに減少

減少の理由は、誰かれもが受検できるわけではなく、私立型の学習が必要との認識が浸透してきた結果と思われる。各学校にもカラーができ、難度もハッキリしてきた。『都立小石川中等教育学校』、『神奈川県立相模原中等教育学校』、『都立白鷗附属中学校』、『都立桜修館中等教育学校』などが人気を集めている。

東海エリア(岐阜・愛知・三重)

東海エリア(岐阜・愛知・三重)

1位 東海地区の受験者数増加

少子化によって小6の児童数の減少が進む一方で、愛知県・岐阜県・三重県ともに延べ中学受験者数は増加した。その要因としては、2020年度から始まる新しい大学入試に向けた改革の概要が発表された影響に加え、入試日程の変更による「併願機会」の増大が考えられる。

2位 入試形態の多様化が進む

入試日程を変更することにとどまらず、「特待生入試」・「英語入試」・「AO入試」・「午後入試」など、各学校で多様な入試形態を導入する取り組みが広がりを見せている。こうして各学校が多様な入試形態を導入することに従って、受験生も多様化。中学受験者のすそ野も広がっている。

3位 WEB出願校の増加(8校→12校)

東海地区において、新たに4校(『愛知工業大学名電中学校』、『聖霊中学校』、『大成中学校』、『中部大学春日丘中学校』)でWEBでの出願が可能となった(WEB出願校が8校→12校に増加)。こうしたWEBでの出願を導入した学校の多くでは志願者数を伸ばしており、この動きは今後もさらに広がると思われる。

4位 愛知県で入試日程の前倒し

愛知県の入試は例年、1月の下旬から始まっていたが、2018年度は『星城中学校』・『大成中学校』の入試日が1月上旬(1月8日)に繰り上がり、話題となった。入試日を1月上旬に繰り上げた結果、2校とも昨年の2017度を上回る多くの受験生を集め、愛知県の延べ受験者数増加の一因となった。

5位 愛知県の女子校で受験者数減少

愛知県では女子の受験生数の減少に伴い、女子校の多くで受験者数が減少した。増加したのは導入3年目のアドミッションポリシーを重視した「VAP選考入試」によって幅広く受験生を集めた『聖霊中学校』と、同中学校の難化により二次試験で受験生を集めた『名古屋女子大学中学校』の2校のみにとどまった。

6位 『滝中学校』の受験者数増加

共学トップ校の『滝中学校』は、特待生の枠を拡大した(20名→30名、半額免除→全額免除)。このことにより、『東海中学校』、『南山中学校女子部』と併願して受験する者の数が例年以上に増加した。この結果、『滝中学校』は昨年に続いて受験者数が増加し、難化することにつながった。

7位 『海陽中等教育学校』3教科入試導入

『海陽中等教育学校』では、今年度より3教科入試(国語・算数・理科)を導入した。これによって「特別給費生入試」で3教科での入試が主流の関西地区からの受験者数は増加したが、「入試Ⅰ・入試Ⅱ」では東海地区や首都圏からの受験者数が減少。入試全体では受験者数が減少した。

8位 『名古屋中学校』の受験者数大幅増

『名古屋中学校』が今までの受験者数を大きく更新し、過去最多の受験者数となった。その理由は、愛知県内の男子の受験者数が増加したことに加え、昨年度まで同校と同日の入試だった『大成中学校』が入試日を前倒ししたことにより、尾張地区北部の受験生の併願が増加したことによるもの。

9位 三重県で延べ受験者数が2年連続増

三重県は3県中、最も小6児童数が減少しているが、延べ受験者数の増加率は最大となった。三重県内のトップ校である『高田中学校』と選抜系のコースを併設する学校との併願機会が拡大したことで、成績上位層の受験機会が増大。加えて、他校でも入試形態の多様化が進み幅広く受験生を集めた。

10位 岐阜県の4校が同日入試に

岐阜県の東濃・中濃地域の4校が同日入試になり、『多治見西高等学校附属中学校』『麗澤瑞浪中学校』は受験者数減少、『帝京大学可児中学校』『美濃加茂中学校』は微増。エリア内での併願ができなくなったことで、愛知県の『中部大学春日丘中学校』などを併願受験する受験生が増加したことも考えられる。

関西&中国エリア(京都・大阪・滋賀・兵庫・和歌山・岡山・広島)

関西&中国エリア(京都・大阪・滋賀・兵庫・和歌山・岡山・広島)

1位 受験者数減も中学受験率が上向きに

近畿2府4県の中学受験者数は16,622名。小6児童数が少子化の影響で昨年より6,275名減った影響で、受験者数も199名減少した。ただ中学受験率でみると、昨年9.3%から9.5%と上昇しており、関西圏での中学受験率が上向いてきている。また中国エリアでもこれに似た状況になっている。

2位 大阪で中学受験率が急上昇

関西エリアの私学志向の高まりを牽引しているのが大阪府の私学。昨年より小6児童数が3,176名減少する中、中学受験生数は20名増加した。中学受験率でみると、昨年の9.6%から10.1%へと急上昇している。来年もこの傾向が続くのか、他府県に広がるのか、大きく注目されている。

3位 中学入試がさらに短期決戦に

「実質3日間入試」といわれる関西エリアの入試。2018年度は午後入試を行なう学校が増え、日程を前に動かす学校が増えた。これにより、さらに短期決戦の中学入試となった。3日目から2日目、2日目から初日の午後に動いた学校が多く、特に3日目に実施する学校の少なさが目立つ結果となった。

4位 男子の最難関校志向強まる

関西エリアでは従来から男子の最難関校志向が強いが、ここ数年は全国区の『灘中学校』を除けば落ち着いてきていたが、今年は灘に続く進学校の『東大寺学園中学校』、『甲陽学院中学校』、『大阪星光学院中学校』が多くの受験生を集めた。大学入試改革の内容が固まるなか、高い学力を身に付けることを重視した傾向と言えるだろう。

5位 関関同立に人気が集中

大学入試改革の影響を受け、大学の付属校人気が上昇した。今年の結果からは、特に関関同立系列の付属校に人気が集中している。際立ったのは『同志社香里中学校』と『関西大学第一中学校』。変わることに対しての安定志向と思われるが、この傾向は来年以降も続くと思われる。

6位 共学の進学校人気が高まる

共学の進学校も好調。特に女子に強い傾向で、『西大和学園中学校』や『洛南高等学校附属中学校』といったトップ校だけでなく、共学2年目で先進性のある教育に期待が高まる『高槻中学校』をはじめ、『清風南海学園中学校』や『須磨学園中学校』が昨年に引き続き多くの受験生を集めた。

7位 「英語入試」実施校の増加

首都圏だけでなく関西エリアでも「英語入試」を実施する学校が増加している。今年は昨年より9校増えた28校で実施されており、英語入試を実施する学校は全体の20%におよんだ。その多くは、選択科目として英語を取り入れているが、英語単独の入試形式を取る学校も増えてきている。

8位 適性検査型・思考力型入試の増加

「適性検査型入試」も増加している。今年は昨年から7校増えて19校となった。多くの学校は、国立・公立中高一貫校の受験生を意識したもので、大学入試改革を意識する学校は「思考力型入試」と呼び、記述力に重点を置くものが多い。来年以降、さらに入試の多様化がすすむと目されている。

9位 落ち着く公立中高一貫校受験

京都府の『洛北中学校』・『西京中学校』、大阪府の『富田林中学校』を代表に依然人気の高い公立中高一貫校だが、志願者数は多少減(昨年対比で洛北が-76、西京が-13、富田林が-106)。入試が適性検査型で、私立型の中学受験体制を取る必要があることが広まったことによる結果と思われる。

10位 学校選択のプライオリティが変化

大学入試改革やAI新時代を前に、学校選択において優先事項が変化している。関西や中国エリアではまだその兆しが見えはじめた段階。大学進学実績や偏差値の高さだけでなく、新時代にむけた先進性のある教育の取り組みにも注目し、総合的に受験校を決定しているご家庭が多くなってきている。