Press "Enter" to skip to content

インタビュー|田中圭さん「『大好きなバスケがしたい』。そんな思いで決めた中学受験の道」

日本国内でも指折りの進学校を経て、俳優の道を目指したという異色の経歴。そこには、どんな物語があったのでしょうか。

「高校バスケがしたい」。そんな思いで受けた中学受験

――――日本屈指の進学校として知られる渋谷教育学園幕張中学校に進学された田中さん。小学生時代はバスケットボールチームの東京YMCAに所属し全国大会優勝も経験されたそうですね。そんな“バスケ少年”だった田中さんが中学受験に挑戦することになったいきさつを教えてください。

田中圭さん(以下、田中) 小学生時代、ピアノや絵画などいろいろな習い事をさせてもらった中で唯一続いたのがバスケットボール。やればやるほどその魅力にハマっていきました。その頃は「将来、高校バスケを本格的にやりたい」という思いがとても強く。でもそうなると、どうしても高校受験のために一番伸びしろのある中学生のときにブランクが空いてしまいます。なので、母と相談して、「高校受験のために一旦でもバスケを辞めなくてはいけない」ということを回避しよう、という理由で中学受験をすることに決めたんです。

―――「バスケがしたい」という思いで中学受験の道を選んだとは驚きです。受験勉強はかなり真剣に取り組まれていたとお聞きしました。

田中 そうなんです。というのも、通っていた塾がとにかく厳しくて。勉強面というより生活態度に対して厳しかったです。ある時、宿題を忘れてしまって、その理由を先生に尋ねられたのですが、僕は怒られるのが怖かったので「母ちゃんが宿題を鞄に入れ忘れた」ととっさに取り繕ってしまったんです。「親のせいにするな!」とこっぴどく怒られました。でも、むやみに厳しいのではなく筋が通った厳しさだったので、頑張って通い続けられたんだと思います。

ケガによる挫折…新たに俳優の道を開いてくれたのは母だった

バスケの挫折があるから、今がある
人生は何がどう転ぶかわからない

―――見事、中学受験に成功された後はバスケ漬けの毎日だったのでしょうか?

田中 いや、実は思い描いていたバスケ生活は実現できなかったんです。中学3年生の最後の大会の後、怪我をしてしまって…。それで、中学生活が終わると同時に、バスケも引退することになりました。「今までずっと打ち込んできたものが突然なくなってしまった」という喪失感や虚無感は大きかったですね。一方で進学校だったから、まわりの皆は本当にすごいんですよ。明確な高い目標を持って切磋琢磨するような環境で。その中に一人取り残されてしまったような気がして、高校に上がれたというのに、しばらくはなんとなくダラダラと学校生活を送るように…。

―――高校の頃にお母様が俳優のオーディションに応募され、それを契機に俳優の道が開いたとお聞きしましたが、その頃のことですか?

田中 そうですね。そんな僕を母なりに励まそうとしてくれていたんだと思います。俳優オーディションは、勝手に応募していたんですけどね(笑)。でも母が出してくれたオーディションは、僕が次に向かう道への突破口として、ちょうどよかったのかもしれません。合格したときは正直「これで勉強しない言い訳ができた!」と思いましたし。レッスンも、「勉強をまじめにやらなくていい」なんて理由で通い始めたのですが、そこで自然と芝居の楽しさにふれたり、高校の友だちと映画の舞台挨拶を徹夜で並んで観に行ったりしていたことで、次第に芝居に対してふつふつと興味が湧いていきました。振り返ると、芝居のおもしろさに気づき始めたのは、その頃だったと思います。

子どもの成長過程で、学校という環境は大きな鍵になる

頑張っている同級生の背中を見て
『この世界で走り抜けよう』と思えた

――――本格的に俳優業に取り組んでいこうと思われたのは?

田中 高校卒業のタイミングです。まわりは皆、自分の目標に向かって必死に頑張る人ばかりで、「皆が頑張っているなら、僕も何とか俳優の世界で頑張ってみよう」と決意しました。ですから、あの学校で本当に良かったと今でも思っています。学校って、その年齢の子どもにとっては大事な生活の拠点じゃないですか。だから、どんな環境で過ごすかというのは本当に大切だと感じます。今、僕は2人の女の子の父親でもあるんですけど、子どもにいい環境で学校生活を送ってもらいたいという親御さんの気持ちも痛いほど分かります。

――――2人のお子さまたちへの教育についてはどうお考えですか?

田中 東京で育つ子どもは、当たり前のように塾に行っているし、宿題の量も多いですよね。僕の子どもたちも、塾に費やす時間が長いので大変だなと思うことはあります。でも、それは自分に合った学校環境を手に入れるためだから。偏差値は関係ありません。

周りの人が積めない経験を積めるって
すごくうらやましいこと

――――それでは最後に、海外で学校に通う子どもたちに向けて、メッセージをお願いします。

田中 僕は、帰国子女ってとてもカッコいいと思うんです。それは、語学が堪能になるということだけではなくて、周りの人がなかなか積めない経験を積むことができるから。それは大きなアドバンテージだし、すごくうらやましいなと思います。今の経験を十分に活かして、未来に羽ばたいてほしいです。

左上/ 15 歳の事務所応募時の写真。挫折を経験し、バスケットボールとは別の道を歩み始めた。 右上/ 7 歳の頃、祖母と出かけた浜辺で。 左下/中学3 年生で経験した2 週間のニュージーランド研修旅行にて。右下/高校3 年生の頃。目標に向かって頑張る同級生たちの背中を見て、自身も俳優の道に進もうと心に決めた。今でも当時の先生とは仲良し。

田中圭さんの一問一答×10

❶好きな言葉は?
一発逆転!

❷嫌いな言葉は?
しょうがない

❸好きな食べ物は?
ハンバーグ

❹嫌いな食べ物は?
パクチー

❺マイブームは?
音楽を聴くこと

❻自分の性格を分析すると?
適当

❼夜のマイルーティーンは?
サプリを飲む

❽10年後にどうしてたい?
何してるか分からないけど、楽しそうだったらいいな。

❾生まれ変わったら何になりたい?
モグラ

❿田中さんにとっての学校とは?
色んな事を学ぶ場所。
学校での出会いは大切だと思う。

プロフィール

田中圭

田中圭(たなか・けい)さん

1984年、東京都生まれ。高校1年生の時に受けた映画「死者の学園祭」のオーディションがきっかけで芸能界入り。2000年、任天堂「マリオパーティー3」のCMでデビュー。2003年、フジテレビドラマ「WATER BOYS」で注目を集め、2014年にはNHK大河ドラマ「軍師 官兵衛」に出演。2018年、テレビ朝日ドラマ「おっさんずラブ」で主演を務めた。現在は、ドラマや映画、バラエティ番組など多方面で活躍。現在、映画「総理の夫」が公開中。

文・編集/『帰国便利帳』編集部 田代くるみ(Qurumu合同会社)、小山田滝音(株式会社ブラインドファスト)
撮影/小川拓洋  スタイリスト/伊里瑞稀  ヘアメイク/花村枝美(MARVEE) ※2021年夏インタビュー

【関連記事】
スペシャルインタビュー記事を読む