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帰国子女教育情報|日本の小中学校に体験入学するには①

一時帰国を利用した日本の小中学校での体験入学を検討しているご家族のために、学校探しの手順から通学の準備や心構えなど、知っておきたい知識をまとめました。

基礎知識

目的とメリット

小学校入学時から現地校やインターナショナルスクールに通う子どもにとって、日本の学校は未知の世界。一度も通学経験なく本帰国を迎えるのは親子ともに心配だろう。また、日本の学校に通った経験のある子どもでも、海外生活が長くなってくればやはり本帰国は不安になるもの。そのため、もし長期休暇などに一時帰国の機会が持てるならば、日本の学校に体験入学してみてはいかがだろうか。体験入学は、先々の不安を減らすのはもちろんのこと、日本人としての自覚や、日本への親しみを持つためにも有効な手立てになるはずだ。また、諸事情で一時帰国をする期間が長くなった場合などに、教育の空白期間を作らないことを目的に体験入学を活用するといった例もある。

教育機関のスタンス

体験入学は行政によって制度化されているものではなく、方針も市区町村の教育委員会や学校ごとにさまざまだ。受け入れ基準、手続き方法などもそれぞれ異なり、明確にルール化されていない場合がほとんど。このため、ある地域/学校で受け入れ条件を満たしていなくとも、方針の違う別の地域や学校ならば希望が通る可能性もあることを覚えておこう。
とはいえ、たとえ公立校といえども受け入れ義務があるわけではないので、希望がすべて叶わうわけではないことを理解しておくのは大前提。学校選び、交渉や手続きといった過程において、保護者にはその都度柔軟な対応が求められる。

何年生で行うべきか?

「日本の学校の雰囲気を知りたい」といった目的ならば、何年生でもよい。一般的には、学齢の低い子どもほど未知の学校に溶け込むことも容易だ。日本の学校文化を知らずに長年海外の学校に通い、本帰国で大きなカルチャーショックを受けるよりも、早いうちから知っておくに越したことはないだろう。本帰国後に通う学校の下見など、明確な目的がある場合なら、小学校高学年、中学生では行う意義があるだろう。

時期はいつがよいか?

アメリカ、ヨーロッパなど北半球の現地校に通う子ども、また欧米系のインターナショナルスクールに通う子どもは、現地の学校が休みになる「6月~7月前半」に行うケースが多い(日本の学校は1学期末。夏休みは7月末~)。
そのほかの地域でも、基本的に海外校の長期休暇に合わせるが、年度の変わり目になる春休み前などは多忙を理由に学校側に敬遠されることもあり、受け入れ校探しが困難な場合もある。

期間はどれほどか?

体験入学の期間については、数日から1カ月未満程度が一般的だ。教育委員会や学校によっては2週間以内などとルールを設けていることもある。あまりに短い慌ただしい滞在では子どもが溶け込む時間も足りず、得るものも少なくなるだろう。逆に長期にわたる場合には、体験入学ではなく住民票を日本に移した上で義務教育として通学することを求められることもある。どの程度の期間ならば「体験」とみなすかどうかも、ケース判断となる。

受け入れ校探し

まずはコンタクトを

体験入学を行うことを決めたら、まずは希望する学校を管轄する市区町村の教育委員会に連絡し、可能かどうかの確認をとる。可能ならばその後必要な手続きについて確認する。
可否についての最終的な決定権は学校長が持つことも多い。学校とやり取りをする際には、体験入学を希望する理由や海外校での子どもの学習進度などをしっかりと伝え、判断を仰ごう。

学校はどう選ぶ?

体験入学は、公立の小学校や中学校で行われるケースがほとんどだ。私立校では入学資格や学費などがハードルとなるため、帰国子女教育に熱心なごく一部の学校を除き、ほぼ受け入れは行われていない。
なお公立校では、受け入れの条件として「一時帰国時の滞在先が学区内にあること」をあげることが多い。
また、中にはその学区内での住民登録があることを受け入れ条件としている市区町村もある。しかし、わずかな期間の体験入学のためだけに住民票を動かすのは現実的ではないので、登録がないならこうした地域での受け入れ校探しはあきらめ、別の地域を考えたほうがよいかもしれない。
以下では、状況別の学校選びについていくつかのケーススタディを紹介しよう。

・祖父母など親戚宅に滞在する場合

一時帰国時の滞在先となる親戚宅の学区にある学校へ申込むケース。こうした場合、事前の交渉や書類の提出、通学の準備などを身内に頼ることができるので心強い。毎年、同じ時期に体験入学をしている子どもの例もある。ただし、現地校やインターナショナルスクールからの帰国生を見かけない地域では、在籍する子どもたちに上手く受け入れてもらえなかったケースもあるので注意が必要だ。

・日本に家があり、住民票を残していない場合

自宅の学区にある学校が本帰国後に通う予定の学校ならば、多くのケースで好意的に受け入れられている。子どもにとっても帰国後に通う学校の様子がわかるので、より有意義な体験となるだろう。

・決まった滞在先はないが通いたい学校がある場合

特に決まった滞在先があるわけではないが、「知人の子どもと同じ学校にどうしても体験入学させたい」「ぜひとも都心の学校を体験させたい」などといった強い希望がある場合、ホテルやサービスアパートメントを滞在先として通学したというケースも見られる。しかし、そうした場所からの通学に難色を示す学校もあるため、希望が通るかどうかは未知数だ。

断られたケース

体験入学を断られてしまったというケースもいくつか紹介しよう。

・海外で感染力の強い病気が流行した時期

豚インフルエンザ、SARSなど、感染力の強い病気が世界各地で蔓延した時期には、該当地域からの一時帰国生が数週間の自宅待機の対象に指定されたことも。あるケースでは、日本滞在期間のほとんどが自宅待機の期間と重なることとなり、断念したという。

・学期末、年度末などで学校が多忙のため

多忙なシーズンであるため、一時帰国生の十分なケアができないことを理由に受け入れを断られたケース。中学校では、定期試験の期間と重なる時期に希望しても断られてしまう場合が多いようだ。