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幼児期の性教育、コウノトリはNG?(後編)

「幼児期の性教育意識調査 2022」保育従事者の声は?

幼児期からの性教育について、「どろんこ会グループ」が実施した「幼児期の性教育意識調査 2022」を紹介。昨日掲載の(前編)では保護者の回答を取り上げたが、今日は保育従事者に対する調査結果を見ていこう。

【調査概要】(抜粋)
2:保育従事者への幼児期の性教育に対する意識調査結果

調査期間 2022年8月1日~2022年8月31日
調査機関 どろんこ会グループ(自社調査)
調査方法 PCやスマホなどからアクセス可能なアンケートフォーム
調査対象者 どろんこ会グループの保育園、発達支援つむぎに勤務する全スタッフ
回答者数 1376人

9割以上の保育従事者が性教育を「大切」と回答

「性教育にどのようなイメージをもっていますか?」という質問に対し、「大切なことだと思う」と回答したスタッフは93.2%で、保護者同様、約9割のスタッフが性教育を重視していることがわかった。性教育を開始する時期については、同グループの保育園では5歳児に実施していることから、「5歳児から」という意見が多く見受けられたが、「具体的な性教育については 4、5 歳児からでも理解可能だが、1歳児からでも簡単な言葉で伝えるとお尻を隠すなどする仕草や理解も感じられるので、日々伝えていくことが大事だと考える。また職員でも低年齢児から意識することで虐待防止、衛生管理にもつながると思う」などの意見も。

「園児の性的な行動(性器タッチや友達同士での見せ合い、自慰行為など)を目にしたり、園児から胸を触られるなどの行為を受けたりしたことがありますか?」という質問には、67.2%のスタッフが「ある」と回答。その際には、プライベートゾーンの話を伝えたり、違うことに興味がいくようにする、といった対応をしているスタッフが多いことも分かった。

発達に気がかりのある子どもへの性教育も重要

同グループでは発達に気がかりのある子どもを支援する子ども発達支援センターや児童発達支援事業所「つむぎ」も運営しているが、発達支援に勤務する保育士に「つむぎ利用児にも性教育を実施すべきだと思いますか?」と質問したところ、「実施すべき」との回答は84.6%に上った。理由としては、「支援の必要有無にかかわらず、性教育は必要。自分の大事な身体だから」「理解できるかどうかは子どもの発達段階によって異なるが、大切なことなので伝えていった方がよいと感じる。子どもだけでなく保護者にも伝えて、共に学ぶ必要があると思う」などの意見があった。

子どもたちが間違った性情報にアクセスしやすい昨今

2004年から性教育を実施しているどろんこ会グループだが、意識調査を行ったのは今回が初めてとのこと。その背景について広報部の青木利津氏は、「インターネットや SNS、スマートフォンなどの普及で、性教育を始めた当時よりも、低年齢で間違った性の情報に簡単にアクセスしてしまうことが増えています。どろんこ会グループの『性教育』も時代の変化に合わせてより良いものにしていくため、保護者やスタッフの考え、意見を調査することにしました」と話す。

なお、どろんこ会グループが取り入れている5歳児向けの性教育プログラムは、「理事長の安永愛香が性教育の専門家のアドバイスを受けるなどして約20年かけて作り上げてきました。包括的な性教育の視点で作り上げたプログラムであるため、結果的に『国際セクシュアリティ教育ガイダンス 科学的根拠に基づいたアプローチ ユネスコ編(2020年・明石書店)』の5歳から8歳の学習目標に一致したものとなっています」(青木氏)といい、パズルや人形を使いながら、体の不思議や命の誕生についてわかりやすく伝える工夫をしているという。

今回の調査結果では、「性教育を大切に思う保護者は9割以上」の一方で、「必要だとは思うが実際はしていない」という現状が浮き彫りになったが、これについて青木氏は、「ご家庭では性についてどのように伝えてよいか分からないといった声もあり、必要だと感じても難しいと感じる保護者が多いようです。保護者の方が戸惑いなく、ご家庭で子どもたちと性の話ができるように、保育士とともに性教育について考え、学んでいく機会を設けることが大事だと思っています。そのため、弊法人では保護者も参加できる『幼児期の性教育講座』を実施しています」と話す。

はぐらかしたりせず、本当のことを伝えて

最後に、我が子の性教育について戸惑う保護者に向けてアドバイスを伺った。

「まず、子どもが体に興味を持つのは、いやらしいことではなく、自然なことだとご理解いただきたいです。幼児期になると自分や他者の体、男女の特徴の違いにだんだん気づき、『なぜ?どうなってるの?』と知りたい気持ちであふれ、言葉に出したり、自分や友達の体を触って確かめたりしたくなるのです。そんな時こそ、性の話をするチャンスです。子どもの質問に対して、大人がはぐらかしたりごまかすことなく、また恥ずかしがらずに正しいことを伝えることが大切です。例えば、『赤ちゃんがどうやって生まれてくるの?』と聞かれて『コウノトリが運んでくる』と答えるのはNGです。『お母さんのお腹の中で大きくなり、生まれてくる道がある。その道はおしっこの穴とウンチの穴の真ん中にある穴からで、通れない時はお腹を切って出てくることもある』というように、子どもにも伝わりやすい言葉を選びながら、本当のことを話せば、子どもは素直に受け止め、子どもなりに理解します。絵本を使うとより分かりやすく伝わります。弊法人の性教育で使用している『おちんちんの絵本』(ポプラ社刊)もおすすめです」

実践しやすい内容なので、参考にしていただきたい。
参考リンク/https://www.doronko.jp/action/20221226a/

(取材・文/中山恵子)