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コロナ禍における子どもの困り感とは? 「令和2年度 児童厚生1級特別セミナー」リポート(前編)

不安感や不登校など問題を抱えている子どもの背景を理解する

コロナ禍で子どもたちはどのような問題を抱えているのか、その一端を知るヒントになるかもしれない、と一般財団法人 児童健全育成推進財団主催の「令和2年度 児童厚生1級特別セミナー」を聴講した(2021年3月13日、オンライン開催)。同財団は全国の児童館(0歳~18歳までの子どもたちが無料で利用できる施設)を支援していて、本セミナーは児童館職員の実践報告を兼ねた勉強会だ。日本の児童館に限定した話だけでなく、現代の子どもが置かれている状況や子どもの健全な育成に関するスピーチや議論があったので、その一部を紹介したい。

セミナーの前半は、「コロナ禍における子どもの困り感を理解する」と題して、西真岡こどもクリニック幼保・学校連携医療部顧問の柳澤邦夫(やなぎさわ・くにお)氏がスピーチをした。柳澤氏は、小学校教諭、厚生労働省雇用均等・児童家庭局育成環境課児童健全育成専門官、栃木県河内郡上三川町立北小学校校長を務めた経歴があり、長年にわたって子どもたちの育成にかかわっている。

柳澤氏は、不安感が強い子どもや不登校の子ども、学校や児童館・児童クラブなどでの生活がうまくいかない子ども(忘れ物が多い、学習についていけない、一般的な行動ができないなど)など、“困り感”を抱えている子どもの背景には、親のネグレストや暴言・暴力など生育環境の問題や神経発達症(発達障害)などがあることも多いと言い、その診断の難しさに言及。児童館に通う子どもたちの中にはこうした問題を抱えている子どももいるので、児童館職員として知っておきたい知識や接し方などを伝えていた。

小学生の間に視力は大きく低下、睡眠時間が減りゲーム時間は増える

数々の話題の中でも、コロナ禍で加速したといえそうなのが、子どもの視力低下やゲーム依存の問題だ。

「先週、ある小学校に行き、養護の先生から児童の健康状態のデータを見せていただきました。びっくりしたのは、小1~小6で正常な視力の子どもが半減していたことです。早くから近視になると、将来的な大きな眼病になるリスクも大きいです。睡眠時間とゲーム時間の調査では、小5、6年になると平日の睡眠時間が減り、反比例してゲーム時間が増えています。また、現在、文部科学省によるGIGAスクール構想が進められていて、児童・生徒が一人一台のパソコンやタブレットで学習するようになってきていますが、その他の学習や習い事なども画面を通じて付き合うことが増えています。視力や睡眠への影響が心配です」(柳澤氏)。

端末を使ったオンライン学習のメリットは大きいうえ、コロナ禍でいつまた休校になるかわからない現状では早く整備を進めた方がよいといえるが、一方で目をはじめ心身への影響も考えなくてはならない。

「児童館や児童クラブは、遊びを通じて健全な育成を助ける場。最近はその遊ぶ時間を画面の共有に奪われているので、どう取り戻していくかがひとつの課題」と柳澤氏は提言した。続きは後編にて。

(取材・文/中山恵子)