Press "Enter" to skip to content

夏休みの一時帰国中にも注意!水難事故を防ぐためにこれだけは守ろう

まもなく海水浴や川遊びのシーズンが到来する。海外滞在者の中には、夏休みに一時帰国して、親子で日本の海や川を楽しもう、と計画している人もいるだろう。水辺のレジャーは楽しい一方、水難事故の危険も伴う。出かける前に、命を守るための対策を知っておきたい。

水辺では子どもから絶対に目を離さないこと!

「平成30年(2018年)における水難の概況」(警察庁生活安全局生活安全企画課)によると、昨年の国内の水難者は1,529人、うち死者・行方不明者は692人だった。このうち中学生以下の者は、水難者193人で全体の12.6%、そのうち死者・行方不明者は22人と、決して少なくない。死者・行方不明者の出ている水難事故の多くは海や川で起きていて、子どもの場合は水遊び中の事故が多いことがわかっている。

不幸な事故を防ぐには、自然を相手にしていることを忘れずに、安全対策を万全にしておくことが大前提だ。保護者としてできる基本的なことは以下のとおり。

  • 悪天候の予報が出ているときは、海や川に近づかない。
  • 遊泳禁止の場所では水に入らない。(…浅く見える場所でも急激に深くなっていることもあり危険。)
  • 保護者は子どもから目を離さない。(…海水浴場など人が大勢いる場所でも溺水事故は発生している。“誰かが見ているだろう”と油断せず、自分の子どもからは目を離さないようにする。)
  • 子どもだけで水遊びをさせない。
  • ライフジャケット(救命胴衣)を着用させる。

ライフジャケットは必須。溺れたときは、浮いて待つ!

ライフジャケットは必須。溺れたときは、浮いて待つ!

実際に溺れそうになったときはどうしたらよいのか。ライフジャケットを着用していない場合、「背浮き」が鍵になる。水面に仰向けになって浮きながら救助を待つことで、助かる可能性が高くなるのだ。

最近では、小中学校の水泳授業で「背浮き」を教えるようになってきている。背浮きは、2020年度からの新学習指導要領により、小学校高学年で必修となる。また、さまざまな団体が講習会などを行っている。

例えば、川崎海上保安署では例年7月に、川崎市内のいくつかの小学校で「安全教室」を実施している(写真)。その様子を、海上保安庁川崎海上保安署・救難係長の永田直史氏に聞いた。

「児童には、溺れている人を見つけたときと自身が溺れてしまったときの対処法を教えています。溺れている人を見つけたときは、“浮くもの等を投げてつかませる”“協力者を呼ぶ”“早い通報(緊急電話118番 ※1)”が大切であることを説明します。自身が溺れてしまった時は、“とにかく(自身の楽な姿勢で)浮くこと(Just Float!)”を説明し、実際に普段着のままプールに入って背浮きをしてもらいます。息を吸った状態で背浮きをすると、上半身が浮き下半身が沈んでしまう体の特性を知ってもらうためです。背浮きが上手にできない児童には、頭を少し下げて、おへそを高くするといったコツを指導することもあります。次に、プールにスニーカーなどの靴をいったん沈めて浮いてくるところを見せて、下半身の浮力の足しになることを体験させ、無理に脱ぐ必要がないことを教えます。また、身近な物で浮いていられることも教えます。例えばペットボトルやクーラーボックス、ゴミ袋などがあります。ゴミ袋に空気を入れて膨らませれば浮くこともできます。溺れている人が離れている場所にいるときは、ペットボトルに少量の水を入れてキャップを閉めて投げれば、遠くに投げることもできます。ほかには、みんなで同じ方向に歩いて大きな流れを作り、その流れに対して体を正面に向けるのと体を横に向けるのとでは、水の抵抗力がどのように変わるのかを体験してもらいます。川などの流れがあるところでは、流れに対して体を横向きにした方が抵抗は少なく、体力の消耗も少なくて済むのです」

このほか安全教室では、海に落ちたときを想定して、自分の身は自分で守るためにライフジャケットを着用する体験をしてもらっているという。ライフジャケットを着たままプールサイドから飛び込む(落水体験)ことで、泳ぎが苦手な人でも落ち着いて浮いていられることを知ってもらうためだ。

永田氏は潜水士として救助活動に携わってきた経験から、「海中転落や船舶海難のときにライフジャケットを着用していれば助かったと思われるケースは多々ありました。シュノーケリングや釣り、ボート、カヌーなどをするときは、海で悲惨な事故に合わないように備えが必要です。万が一、落水した場合は、浮力を確保することが命を守ることにつながります。“自分の身は自分で守る”ことは私たちが救助活動をするうえでも大切なことです。大時化の海に不十分な装備で海に入れば救助どころか自分の身も守れません。ですから、日頃から装備の点検は欠かさずに行っています」と話す。

こうした対処法をまずは保護者が知り、守り、子どもにきちんと伝えるようにしたい。

※1~海の「もしも」は118番~海上保安庁の緊急通報用電話番号。
※写真は2点とも川崎市内の小学校で実施された「安全教室」の様子。川崎海上保安署提供

(取材・文/中山恵子)