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首都圏私立中学入試 2020年の振り返りと2021年の動向予測

大学入試改革など日本の入試を取り巻く環境が変わりつつある現在、私立中学校の入試の動向も気になるところです。そこで、今回は首都圏における昨年の中学入試の動向と来年予想される傾向について専門家にお話を伺いました。

中学受験率が上昇した要因とは?

中学・高校・大学受験専門の進学塾、早稲田アカデミー国際部によると、首都圏の中学入試の受験率は上昇。その要因には次のことが考えられるという。

「2020年度からの新学習指導要領スタートに伴う小学校での英語の教科化やプログラミングの導入、来年度入試からの新テスト『大学入学共通テスト』への移行など、中学入試を取り巻く環境は刻一刻と変化しています。そんな中、中学受験をする小学生の保護者が1990年前後の中学受験隆盛期経験した世代になったことが受験率を押し上げていると考えられます。自身の経験則から私立中学での教育の価値を実感した保護者たちの中学受験への意識が高まっているのでしょう」

また高校受験のさらに先に待ち受ける大学受験の不透明さも大きな要因として挙げられるという。

「首都圏の私立大学の定員が厳格化され、合格へのハードルが上がっていることによって受験が早期化しています。さらに、2020年1月18日・19日に最後のセンター試験が実施され、間近に迫った大学入試改革が強く意識されるようになりました。次年度より開始される予定の新しい大学入学共通テストは、改革の大きな目玉である『英語への民間試験の活用』と『国語及び数学への記述式問題の導入』を見送ったことにより頓挫した感があり、公教育への不安からより一層の中学受験熱上昇をもたらしています」

その結果、首都圏1都3県の中学受験率は5年連続で上昇。1都3県の私立中総定員に対する受験者総数の割合も、男子は総定員22,141名に対して、受験者数25,653名と、受験者数が3,500名も上回ることとなった。また、女子は総定員25,301名に対して、受験者数23,747名と多少の余裕はあるが、年々この差は少なくなっている。

「早稲田アカデミーの塾生のデータを見ても、出願校数、受験校数ともに年々上昇傾向にあり、今年度はここ数年で最多の一人平均7.31校に出願し、そのうち5.65校を実際に受験しています。出願校数・受験校数の増加はネット出願が普及したことも要因の一つです。現在はほとんどの学校で『ネット出願』を受け付けており、学校の窓口に朝早くから並ぶような光景は大きく減少しています。例えば、男子御三家(開成中・麻布中・武蔵中)の3校もネット出願に切り替わっています。また、午前中の入試を終えた後、午後に別の学校の受験に向かえる『午後受験』を行う学校の増加も受験校数を押し上げる要因となっています」

変化しつつある入試内容

さてこのように活況の中学受験だが、近年は入試内容にも様々な変化が表れており、昨年度はバラエティに富んだ内容で実施されることとなった。

「これまでの2科目や4科目型に加え、新しい学力観をみる『新タイプ入試』を実施する学校が増加しています。新タイプ入試とは、公立中高一貫校の適性検査型入試のような思考力そのものを問う総合型の問題を出題したり、英語科目の出題をする入試などのことを指します。また、算数1科目や国語1科目など単科での受験が可能な学校も増えていて、人気を集めています。来年度以降も、プログラミングやプレゼンテーション入試など、多種多様な入試方式が導入されることが予想されます」

保護者の価値観が学校選びに影響

また人気校の傾向も変化の兆しが見られたという。これも受験隆盛期を経験した保護者の考え方が表れた結果かもしれない。

「近年は男子校や女子校よりも共学校の人気が高くなっていましたが、その傾向が変わってきた印象があります。総受験者数のうち共学校を受験する割合は、昨年度は41.4%でしたが、今年度は39.9%となっています。これは『共学だから』という理由ではなく、保護者の皆様が本当にしっかりと学校を選択されるようになったことが背景にあるようです。インターネット上での評判や噂を鵜呑みにせず、実際に学校を見学し、説明会の内容を聞いたうえで、納得して学校を選択されている方が多くなりました」