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フランス発の味覚教育、日本の小学校でも人気

1990年にフランスで始まった味覚の教育活動「味覚の一週間」®が日本でも開催されるようになって今年で9年目。2019年度は10月15日~21日(フランスでは10月7日~13日)の日程で、全国各地でさまざまなイベントが展開される。その中核となるのが、シェフやパティシエ、農産物の生産者などがボランティアで小学校を訪れて子どもたちに味わう楽しさを伝える「味覚の授業」®だ。昨年度は33都道府県、253校、582クラスで実施され、約16,192人の子どもたちが授業を受けた。“味覚の基本を学ぶ”というコンセプトが好評で、年々、参加校が増えているという。

しょっぱい、すっぱい、あまい、にがい、うまみの五味を子どもたちに伝える

しょっぱい、すっぱい、あまい、にがい、うまみの五味を子どもたちに伝える

「味覚の授業」®では、毎年、フランスからシェフを招いていて、昨年度はパリの老舗レストラン<グランヴェフール>のシェフ、ギィ・マルタン氏が来日し、<ザ・キャピトルホテル東急>総料理長の加藤完十郎氏とともに、東京都中央区立明正小学校で授業を行った(トップの写真)。このほか、日本における「味覚の一週間」®の呼びかけ人のひとりでもある<オテル・ドゥ・ミクニ>オーナーシェフの三國清三氏が新宿区四谷小学校にて、料理研究家の藤野真紀子氏が熊本県嘉島町立嘉島東小学校にて(写真2枚目)授業を行うなど、341人の講師がボランティアで参加した。

実際の授業ではどんなことをするのか、実行委員会の城所玲子氏に話を聞いた。
「味覚の基本となるのは、しょっぱい、すっぱい、あまい、にがい、うまみの五味です。授業では、それぞれの味がわかる食材のキットを用意して、子どもたちに味わってもらいます。例えば、高カカオのチョコレートを食べて“苦味”を感じてもらったり、出汁を飲んで“旨味”を感じてもらうのです。以前、<つきじ田村>の三代目である田村隆氏の授業で、子どもたちに出汁に味噌をといた味噌汁とお湯に味噌をといた味噌汁を飲み比べてもらい、どちらがおいしいかを聞いたところ、何人かの子どもはお湯の方を選んだそうです。いつも家で飲んでいる味噌汁に近いから、ということでした。でも、それを否定はしません。出汁の味もおいしいよね、ということを感じてもらい、そこから味に興味をもってもらえればよいと思います」

食事に向き合う時間が、豊かな心を育む

食事に向き合う時間が、豊かな心を育む

また、パンを噛んだときのモチッとした感触、お好み焼きがジュージューと焼ける音など、おいしさには五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)も深くかかわっている。授業では、五味に加えて五感も楽しんでもらえるような工夫を取り入れているという。

「講師の方々には、五味や五感を感じられる試食品を持参していただいています。昨年、中央区立久松小学校にて行われた授業に<レストランアルバス>のシェフ永田宏氏が用意した試食品がとてもユニークでした(写真3枚目)。プチトマトをキャラメリゼしてゴマ塩をまぶしたもので、ゴマの苦み、塩味、キャラメリゼの甘味、トマトの酸味と旨味といった五味のすべてと、ゴマのツブツブ感、キャラメリゼのパリッとした食感、トマトのジューシーな食感を楽しめるのです。子どもたちは出あったことのないデザートにびっくりしていたようです」(城所氏)

「味覚の授業」®では、栄養素についての教育はあえてせず、あくまでも味覚の学びと食べる楽しみを広げ深めることを目的としている。

「現在は、ひとりでスマホを片手にご飯を食べている子どもも少なくありませんし、家族で食べていたとしてもテレビを見ながら食事していることもあります。事情もあるとは思いますが、せめて誰かと食事するときはテレビをつけずにおしゃべりしながら食べるなど、食事に向き合うことを大切にしてもらいたいですね。“今日のご飯はツヤがあっておいしそうだね”といった何気ない会話でも、味わうことへの気付きにつながります。味や色、盛り付けなど食事を通じて多くのことを感じたり、作ってくれた人のことを思いやったりすることで、豊かな心や創造性が育まれていくと思います」(城所氏)

なお、2019年度のテーマは、「発信する日本の味」-未来の家族のために-。また、「味覚の授業」®のほか、講師として参加するシェフの店を中心に五味を感じられる料理のレシピが提供される「味覚の食卓」、協賛・協力企業を中心に行うプロの料理人や大人向けのイベント「味覚のアトリエ」などが開催される。

写真提供/「味覚の一週間」®実行委員会
(取材・文/中山恵子)

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