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帰国子女教育情報|首都圏私立中学入試帰国生入試の最新事情

帰国子女を取り巻く環境は時々刻々と変化しています。帰国生入試に関しても様々な変化が現れていますが、必ずしもメリットばかりとは限りません。そこで、今回は帰国生入試の最新事情について、中学・高校・大学受験専門の進学塾、早稲田アカデミー国際部の担当者にお話をうかがいました。

多様性を考慮して帰国生入試が増加

国際化にともなって、帰国生入試を行う学校は増加傾向にあるが、昨年度も複数の学校が新たに帰国生入試を実施した。

「帰国生入試を実施する学校は、合計196校。5年前の15年度と比較すると20校以上も増加しています。特に昨年度は、品川女子学院中や桜美林中など進学校の新規実施が目立ちました。学校側の意図としては、帰国生入試を実施することで優秀な生徒を獲得するチャンスを増やしたいということと、ダイバーシティの重要性が叫ばれる時代に対応したいという狙いが働いているのでしょう」

一般入試に挑戦する帰国生

だが、ここで注意したいのが、帰国生入試実施校が増えたからといって「入りやすくなった」ということではない。むしろハードルが上がっているケースもある。

「帰国生入試の実受験者数は、延べ受験者数などから算出すると、およそ1000名前後で2年前と同等または微増傾向です。しかし、各校の入試問題の難易度も年々上昇しています。特に難関校では、小学4年生など早期に帰国した生徒が国内進学塾で一般入試向けの対策をしたうえで併願するため、入試のレベルが上がっていると考えられます」

近年では、「帰国生でも一般入試を受ける」というケースも目立つ。早稲田アカデミーでも、一般入試のみを実施する「御三家中」と呼ばれる学校(開成中・麻布中・武蔵中・桜蔭中・女子学院中・雙葉中)に合格する帰国生がいる。開成中では中学入試でも高校入試でも帰国生入試を実施していないが、在校生の約10%に「海外在留経験」があるという。そのため、受験には今までよりもさらに入念な準備が必要となる。

インターネット出願の利点

出願についてはオンライン化が進み、海外在住の受験生家族にとっての負担がかなり軽減されているという。

「インターネット出願は一般入試だけではなく帰国生入試でも広く取り入れられています。もっとも、昨年度は多くの学校が採用している出願システムが一時的な障害により使用できなくなり、一部混乱する場面がありました。とはいえ、海外在住の受験生家族にとって、インターネット出願の恩恵は大きく、かつてのように出願書類を提出するだけのために一時帰国する必要もなくなりました。来年度以降、インターネット出願を採用する学校はさらに増加していくでしょう」

入試日程変更が受験校選びに影響

受験しやすくなったという点では、帰国生入試の実施日程がある程度、定着してきたことも挙げられる。

「当初、帰国生入試の実施校が少なかった頃は各校手探り状態だったこともあり、複数校の受験日程が重複してしまうということはしばしば見受けられました。これは受験生にとって悩ましいだけでなく、学校としても優秀な生徒を獲得する機会が少なくなってしまいます。そのため、各校で試行錯誤が繰り返された結果、現在は、受験者層の重なる学校同士の試験日がかち合わないよう調整されるようになりました。帰国生入試の実施日程のピークは、女子校は12月頃、男子校は1月頃、共学校は11月~1月頃に定着してきたといえます」

共立女子中学校では2018年度に1月から12月に帰国生入試の日程を変更し他校との重複を解消。その結果、受験者数が3.7倍に増えたという実績もある。

英語入試の導入が帰国生にとっての追い風に

多くの帰国生にとって追い風といえる動きも出てきている。一般入試の試験科目に英語を加える学校が増えているのだ。

「一般入試の試験科目に英語を導入した中学の数は、今年度、首都圏で141校(首都圏模試センター調べ)となり、5年前の2015年度と比較して、実に約4.3倍に増加しました。そのため一般入試に先行して行われる帰国生入試で不合格になった生徒が、英語を含んだ一般入試で合格するケースが複数見受けられました。今後、一般入試での英語入試の増加傾向はさらに加速していくはずで、帰国生にとっては追い風でしょう」

とはいえ、人気の帰国生受け入れ校では英語試験の難化が続いており、注意も必要だ。

「渋谷教育学園幕張中や渋谷教育学園渋谷中、広尾学園中をはじめとする英語重視の帰国生入試を行う学校では、英検準1級から1級を保有する受験生も珍しくありません。英検1級保有者が集まった結果、『英検1級保有者でも不合格』という事態も生じています。そのため、こうした人気校を受験する際は、英語力はもとより、海外経験を通じて得られた発想力、思考力、表現力を重視する試験内容(面接含む)が合否を分けるポイントになっていることを意識して対策することが必要になります」

コロナ禍の影響を注視すべし

最後に、2021年度の入試で避けて通れない話題がある。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響だ。それについて担当者はこうアドバイスする。

「来年度の入試においても、前例のない変化が起こることは想像に難くありません。例えば、リーマンショックの翌年には私立校の人気が大きく下がりましたが、今回の休校中のサポート体制が学校選びの材料の一つとなり、特定の私立中に人気が集まる可能性があります。さらには、オンラインで完結する入試形態などのパラダイムシフトが起こる可能性さえ考えられます。しかし、いずれにしても入試に向けた対策としてするべきことに変わりはありません。まずは、センセーショナルな噂に惑わされずに正確な情報収集に努めること、そして信頼のおける模試の成績をベンチマークにしつつ、志望校の出題傾向・レベルに合わせた学習を進めることです。もちろん、面接や作文を課す学校を受験する場合は、海外生活を振り返り、そこで得られた経験値を自分の言葉で語ることのできるように準備することも大切です。社会の混乱する時期だからこそ、正しい判断のための正しい情報が必要です。入試情報や学習内容についてお困りのことがあれば、お通いの塾または早稲田アカデミー国際部までお問い合わせください」