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トークイベントルポ(前編)校則をなくした公立中学校元校長登壇の模様をご紹介!

メディアでも話題となった世田谷区立桜丘中学校前校長・西郷孝彦氏の登壇に注目!

12月12日、認定NPO法人フリー・ザ・チルドレン・ジャパン(以下FTCJ/東京都世田谷区)主催により、千代田区の「毎日メディアカフェ」において、校則をなくしたことで各種メディアからも大きく注目された世田谷区立桜丘中学校前校長・西郷孝彦(さいごう・たかひこ)氏らが登壇するトークイベントが行われた。

テーマは「一人ひとりの子どもが安心して自分らしくイキイキと子ども時代を過ごすために、学校、家庭、地域に求められることは何か?」。会場に20数名、オンラインで70数名参加したイベントの模様をルポする。

桜が丘中学校前校長西郷氏とNPO法人代表中島氏
世田谷区立桜丘中学校前校長・西郷孝彦氏と認定NPO法人 フリー・ザ・チルドレン・ジャパン代表の中島早苗(なかじま・さなえ)氏/写真提供: 毎日メディアカフェfacebook

校則、定期テストなく、服装自由。自主性を重んじ、学力は区内トップクラスの奇跡の学校

トークイベント前半は校則や定期テストを廃止したことで話題となった西郷前校長が登壇。西郷氏が2010年に赴任した当時、桜丘中は荒れていて、それを押さえつける指導が蔓延していた。ルールがあるから守らせようと躍起になる現状に、これでは子どもが楽しいはずがないと、西郷前校長は必要のない校則を徐々に廃止し、ついには下記の通り学校では必須と思われるルールを軒並み廃止した。

【桜丘中学の特徴】

・校則がない
・チャイムが鳴らない
・定期テストがない
・宿題がない
・服装・髪形の自由
・いつ登校してもかまわない
・教室で授業を受けなくても良い(廊下で授業を受けても良い)
・授業中寝ても良い
・スマホOK
・授業を「つまらない」と批判する自由 など

「3年間、楽しく過ごすことが大切です。力で押さえつける教育では楽しくない。みんな違っていて、違っているほうが面白いし、その一人ひとりを大切に、愛情をもって生徒に接し、子どもとともに生きる『みんなの学校』を目指しました」と、西郷前校長。

一発勝負で生徒の負担の大きい定期テストを廃止し、複数回のテストを実施することで生徒の日々の勉強量が増え、学力は区内トップクラスにのびた。

教師が「子どもが好きだ」という“素”に戻ることで、子どもたちも“素”を見せるようになる

放課後に自分が選んだ先生と2人で話せる「ゆうゆうタイム」といった時間も設けた。イベントではその一例として、女子生徒が担任を持たない採用1年目の家庭科教師に、友だちとの関係がギクシャクしている悩みなどを相談する様子の映像が流された。女性教師は「自分も学生時代に友だちと接しにくいことがあった」などと、生徒に寄り添う姿を見せ、同じ人間として相談し合う様子がまざまざと見られた。

西郷前校長の学校改革前には生徒にルールを押し付けることに躍起になっていた教師たちも、本来は子どもが好きで先生になったのだ。

「先生たちも巻き戻しが必要なのです。先生方が『子どもが好きだ』という“素”に戻り、その素を子どもたちに見せることで、子どもたちも素を見せてくれるようになります」と西郷前校長。

自由だからこそ、自分を律する力が付き、個性が認められ、子どもたちは自分に自信をもつ

校則がない状況で、果たして学校としての統率はとれるのか? 紹介された本年3月の卒業生のインタビュー映像を見ると、そんな心配はまったくの杞憂であった。生徒たちは口々に言う。

「自由とは信じること。お互いの信頼関係があってこそ」

「自由だからこそ、責任をもって自分たちで行動しなければならない」

「髪を染めてもいいし、メイクをしてもいいから、自分の個性を出せるけど、私服がダサイと思われたら嫌だし、メイクに興味がないから変に思われるかと最初は気になった。でも、それも自分の個性だからそれでいいと認めてもらえて、自分に自信がもてるようになった」

子どもたちは自由な環境のなかで責任をもって行動し、個性が認められ自分に自信をもって成長していく。桜丘中学校は生徒数約540名。学区外からの入学希望者も多く、現在、90名弱が学区外から通っているという。

明日は、桜丘中学校出身者をはじめ、FTCJで活動する高校生や大学生の登壇の模様をルポする。

(取材・文/大友康子)

フリー・ザ・チルドレン・ジャパン

 

認定NPO法人フリー・ザ・チルドレン・ジャパン/1995年、貧困や搾取から子どもを解放することを目的に、カナダのクレイグ・キールバーガー(当時12歳)によって設立された、「Free The Children」(2016年に「WE Charity」へ改名)のパートナー団体として1999年に日本で活動開始。開発途上国での国際協力活動と並行し、日本の子どもや若者が国内外の問題に取り組み、変化を起こす「チェンジメーカー」になれるよう援助している。現在、学校への出前授業・教材販売、貸出・フェアトレード商品販売・書き損じ葉書の回収・支援先の子ども達との文通プログラム・国内外でのワークキャンプなどを主な事業としており、活動内容は公民・英語教科書などの学校教材に掲載されている