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日本の学校での「プログラミング教育」の実態は?(後編)

日本全国の小中学校でのプログラミング教育の実態を把握し、今後の教育に活かしていくため、特定非営利活動法人(NPO法人)みんなのコードがGoogle.orgの支援のもと大規模な意識調査を実施、その結果を報告している。昨日掲載の(前編)に引き続き、内容を紹介していこう。

プログラミング教育を実施できるよう先生の職場環境の改善も必要

【考察④】考察③で「先生側がプログラミング教育の研修を受けているほど、児童のプログラミングに対する関心度合いも高くなる」ことが判明したが、そもそも多忙な先生たちがプログラミング教育のためのさらなる時間を確保するのは至難の業といわざると得ない。

小学校教員向けのアンケートでは、授業の準備時間を「十分に確保できている」という回答は17.7%で、「十分に確保できない理由」を大半の教員が「校務」と答えている。中学校教員にいたっては「十分に確保できている」と回答したのは11.5%にとどまり、「十分に確保できない理由」としてもっとも多いのが「部活動」の61.5%だった。

【小学校教員調査】

授業の準備時間について「必要最低限しか確保できていない」「不十分である」とお答えした方に質問です。そのような状況で、課題となるものを選択してください。(いくつでも)(n=853)

【中学校技術分野教員調査】

「技術」の授業の準備時間について、「最低限しか確保できていない」「不十分である」でお答えした方に質問です。そのような状況で、課題となるものを選択してください。(複数選択可)(n=1,206)

また、教員のインタビュー調査では、GIGAスクール構想(全国の児童・生徒1人に1台のコンピューターと高速ネットワークを整備する文部科学省の取り組み)における端末の準備整備が教員の負担になっているという声も多く挙がっている。こうした状況を改善することも、プログラミング教育の充実に欠かせないだろう。

プログラミング教育発展のために

本調査に関わったNPO法人みんなのコード 学校教育支援部 プロジェクトリーダーの釜野由里佳(かまの・ゆりか)氏は、「学校におけるプログラミング教育を支援していく中で、現場の状況を知ることは大変重要です。本調査は、幅広く調査したことにより、何が課題で何を重要視すべきなのか、児童・生徒・先生・保護者といった各視点で確かめることができました。引き続き我々にできることを模索しつづけ、活動に生かしていきたいです」と語る。

また、同法人代表理事の利根川裕太(とねがわ・ゆうた)氏は、2020年度がコロナ禍で思うような授業ができなかったことを考慮し、以下のように総括している。

「2020年度は小学校での新学習指導要領の全面実施に伴いプログラミングが始まり新しい教育が始まる一年となるはずでした。しかし、新型コロナウィルス感染症拡大のため、学校現場も未曾有の危機に対応するだけでなく、これまでプログラミング教育の推進役であった先生や教育委員会の担当者もGIGAスクールの整備や遠隔授業の準備等に追われた一年となり、プログラミング教育の実施に多くの困難が伴った一年でした。本調査によって、学校でのプログラミング教育の実施状況については、これまでになく広い範囲での調査を実施し、研修を含む教育委員会・学校の計画の重要性、プログラミング教育の子どもへの効果が示唆されました。本調査が、今後のプログラミング教育の支援策及びその先のテクノロジー教育の政策を検討する一助となればと願っています」

(取材・文/中山恵子)