Press "Enter" to skip to content

採用の内定には親の確認も必須!?約6割の企業がオヤカク実施

ひと昔前は受験の際に大学の門まで子どもを送っていくような親は過保護だと笑われたものだが、子どもの教育や将来に強い関心を抱く親が多くなった現在は、学校選びと同じ感覚で就職活動に口を出し、合同企業説明会にも参加する保護者もいるとか。

半数以上の大学で親向けのキャリアセミナーを開催しており、企業の採用説明会でも保護者向けのスペースを作って対応しているケースもあるという。

株式会社ネオキャリア(東京都新宿区)は「就職活動における『企業』と『親』に関する調査」を実施。2月27日にその結果を公表し、企業側の「オヤカク」意識の高まりや施策実施する割合増加が顕著である、との報告をした。

本調査で定義する「オヤカク」とは、「親に確認」の略称で、「内定者(または選考中の学生)の内定承諾を親が賛成しているか」を企業が内定者(または選考中の学生)に確認すること。

企業規模とオヤカク実施傾向

表1-1 企業規模別・内定者の親に対して行った施策(複数回答) – 年度別

今回(2018年度)全体 前回(2017年度)全体
企業情報を資料を親へ送付 37.9% 39.4%
企業製品を親へ送付 12.6% 8.4%
企業情報ムービー(DVD等)を親へ送付 13.3% 13.2%
親向けの内定理由通知書を送付 17.5% 12.6%
親向けの内定同意書の用意 17.5% 13.9%
親向け企業WEBサイト上の採用情報ページの作成 10.4% 8.4%
企業からの電話による挨拶 12.6% 11.9%
企業からの家庭訪問 6.5% 6.5%
親の企業訪問の機会提供(親向けセミナー) 13.3 10.3
親同席の内定者懇談会の開催(親向け内定者懇談会) 10.4% 3.9%
その他の対応 3.6% 2.3%
内定承諾にあたり、親に対し企業からの対応は特に必要ない 42.7% 41.6%

表1-2 企業規模別・内定者の親に対して行った施策(複数回答) – 従業員数別

従業員300人未満 従業員300-1000人未満 従業員1000人以上
企業情報を資料を親へ送付 29.1% 35.9% 48.5%
企業製品を親へ送付 8.7% 16.5% 12.6%
企業情報ムービー(DVD等)を親へ送付 8.7% 11.7% 19.4%
親向けの内定理由通知書を送付 16.5% 16.5% 19.4%
親向けの内定同意書の用意 20.4% 17.5% 14.6%
親向け企業WEBサイト上の採用情報ページの作成 1.0% 13.6% 16.5%
企業からの電話による挨拶 9.7% 11.7% 16.5%
企業からの家庭訪問 3.9% 6.8% 8.7%
親の企業訪問の機会提供(親向けセミナー) 9.7% 14.6% 15.5%
親同席の内定者懇談会の開催(親向け内定者懇談会) 3.9% 9.7% 17.5%
その他の対応 2.9% 2.9% 4.9%
内定承諾にあたり、親に対し企業からの対応は特に必要ない 48.5% 43.7% 35.9%

「内定承認にあたり企業からの(親に対する)対応は特に必要ない」と考える企業は全体で42.7%しかなく、約6割の企業が内定者の親に対して何らかの施策を実施。この回答を従業員数別にみると、300人未満の企業は48.5%、300~1000人未満は43.7%、1000人以上は35.9%と、企業規模が大きいほど内定者の親向けに手厚い対応を行う傾向がみられた。

企業がオヤカクを行うタイミングを「選考前/選考中/内定時・内定後」の3つの各フェーズでみると、「内定時・内定後」の47.6%、「選考前」の34%、「選考中」の33%の順で多い。

フェーズ別の傾向では、「選考前」では「企業情報資料の送付」「親向けの採用情報ページの作成」が、「選考中」では「企業情報資料の送付」に加えて「企業製品の親への送付」「企業情報ムービーの配布」が、「内定時・内定後」ではさらに「親向けの内定理由通知書の送付」「親向けの内定同意書の用意」を行う企業が増加。特に規模の大きい企業は、企業情報資料の送付はもちろん、企業情報ムービーの配布や親向けの採用情報ページの作成、親向け内定者懇親会などを行う割合が高いことがわかった。

オヤカクで安心するのはいいが、過度の口出しは禁物

表2 親が希望する「オヤカク」施策(複数回答)

今回 前回
企業情報を親へ送付 18.3% 20.7%
企業製品を親へ送付 3.4% 3.7%
企業情報ムービー(DVD等)を親へ配布 2.6% 3.1%
親向けの内定理由通知書を送付 6.0% 7.6%
親向けの内定同意書の用意 4.2% 5.5%
親向け企業WEBサイト上の採用情報ページの作成 2.9% 3.5%
企業からの電話による挨拶 1.1% 0.8%
企業からの家庭訪問 0.5% 0.7%
親の企業訪問の機会提供(親向けセミナー) 3.1% 3.9%
親同席の内定者懇談会の開催(親向けセミナー) 1.1% 1.6%
その他の対応 0.3% 0.5%
内定承認にあたり、企業からの対応は特に必要ない 73.6% 67.8%

一方、親自身の回答をみてみると、オヤカク各施策を「必要ない」と答える親は」73.6%で、昨年よりも少し増加。企業が必要を感じるほどには、親自身はオヤカクを望んでいないようで、ひと安心だ。

アンケートを主催した株式会社ネオキャリアの広報担当・畑田紘孝氏は言う。

「本調査は、親と企業、また親と子の関係性を定量化し、その推移を定点観測することを目的として実施しています。ここ数年の新卒採用市場は急激に売り手市場化し、内定率は上昇を続けてきました。企業の皆さんは、あの手この手で人材確保に奔走されるなかで、親側と比較し企業側の熱量が高まり続けているように感じます。また、親側の方々にはバブル崩壊から就職氷河期を経験された方も相当数いらっしゃることから、特にそうした方々はお子様の就職活動に対して慎重になり、関与を強める傾向があるように見受けられます」

もちろん、就職活動に際して相談にのったり、多少のアドバイスをしたりするのは、あって当然だろう。しかしながら、子ども自身の決定を覆したり、就職先を親が決定づけるようなことは考えものだ。就職後につまずいたときに子どもは親のせいにしてしまうだろう。「オヤカク」で安心するのはいいが、そのあたりだけは冷静でいるべきではないだろうか。

(取材・文/大友康子)