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高校生が運営するNPOが外国人労働者をサポート!(前編)

外国人労働者の人権問題に立ち向かう

 近年、日本に来る技能実習生・外国人労働者の劣悪な生活・労働環境が社会問題化しているが、その改善に向けた取り組みを行うNPO法人がある。しかもそのNPO法人、現役の高校生たちが運営しているという。今回はその活動について見ていこう。

 NPO法人の名は「Adovo(あどぼ)」。advocater(主張する)とadolescent(青年)という二つの英単語が名称の由来で、「10代の若い我々が世界を変える。そのために自分たちの意見をはっきり言う。主張する」という意味が込められている。

 創設者の1人、現在高校3年生の松岡柊吾(まつおか・しゅうご)さんは2020年、高校1年生だった当時、技能実習生・外国人労働者の人権問題をニュースで見て以来、ずっと「自分に何かできることはないか?」と考え続けた。そして同年12月、友だちと一緒にNPO法人Adovoを立ち上げた。

「ともに生き、学び合う『ともいき社会』を創る」という理念のもと、日本で働く外国人のサポートや啓発活動を行う。事業の軸は「国際交流」「日本語教室」「啓発活動」の三本だ。Adovoの具体的な活動内容に迫ってみよう。

同世代として寄り添う「日本語教室」を実施

 事業の三本軸のひとつ、日本語教室「じゃぱぼ」の名称はJapanese(ジャパニーズ)とAdovoを組み合わせたもの。

 外国人技能実習生の多くが18歳から30歳くらいだが、18歳であれば高校生であるAdovoのメンバーとほとんど歳は離れていない。そのことから、「果たして、僕たちが知らない国で家族のために数年間働くとなったら、うまく生活できるだろうか。同年代の人と少しでも話す機会があれば、気持ちは楽なんじゃないか」と考え、同世代の彼らが教える日本語教室を開始した、という。

 Adovoには留学経験があるメンバーがとても多い。インド・カナダ・NZ・イギリス・フィンランドなど! ベトナムやイギリスからの帰国子女のメンバーもいる(イギリスからの帰国子女メンバーは、再度イギリスに戻り滞在中)。海外滞在の経験が外国人労働者の暮らしやすさにつながる取り組みにつながった面もあったようだ。 

「じゃぱぼ」は、特定技能やサービス業就職のために日本語能力試験のN3やN4の取得を目指した教室を実施。eラーニングシステムや、巷の日本語教室でもよく使用している本物の教材、マンツーマン(オンライン型の場合)という環境を整え、一般的日本語教室にも劣らない授業を展開していると自負する。

 しかし、この教室の意義は資格の取得を目指すだけでなく、日本語の会話能力を上げ、同年代の学生と話す機会を提供し、日本で快適に過ごしてもらうこと。事実、授業で音楽やゲーム、映画の話で盛り上がることもしばしば。マンツーマンという環境で、悩みを打ち明けられることもあるという。

全体日本語教室(月1回開催してみんなで学ぶ機会を作る授業)の様子

外国人労働者の重要性を日本の中高生に伝える

 Adovoの事業のふたつめは「啓発活動」で、日本の人々(特に中高生)に日本で働く外国人のことをよく知ってもらうことを目指している。

 技能実習生への暴行事件や、逆に実習生が詐欺の一端を担い、逮捕されてしまうニュースなどもよく耳にする。「外国の若者に日本に行きたくない」と思われてしまうかもしれないし、日本でも「外国人労働者に来てほしくない」という風潮も生じてしまうかもしれない。しかし、少子高齢化が進み、第一、第二次産業の担い手がいなくなることが容易に想像される日本には、「外国人労働者」の存在が絶対に必要だ。

 Adovoは、「選ばれる日本」となるためにはどうすればよいのか、日本の中高生が自分ごととして考える機会を設けたいと考えている。

外国人労働者に関する「小論文コンテスト」を企画

 そこでAdovoは現在、日本全国の中高生を対象に外国人労働者に関する小論文コンテストを企画中。大賞から優秀作まで賞金(図書カード等)を出し、「日本に今後も継続して外国人労働者が来てくれるようにするためにはどのような施策や取り組みが必要か、また日本人はどのように接すればよいのか」について考えてもらい論じてもらう、という。

 狙いは小論文を書くために、インターネットや図書館で技能実習生、外国人労働者について調べ、彼らについて深く知ってもらうこと。今後、クラウドファンディングなどを使用して、お金を集め、慎重に計画を立てていく予定だ。

 明日は、Adovoの事業の三本軸の最後のひとつ「国際交流」と、その一環として企画した「外国人労働者のための運動会」について見ていこう。

(取材・文/大友康子)