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就活調査(前編)来春卒業の大学生4人に1人が“盛りガクチカ”

コロナ禍での「ガクチカ」の実態を調査

「ガクチカ」とは、「学(ガク)生時代に力(チカラ)を入れたこと」を略した新卒採用における就活用語だが、大学時代の大半をコロナ禍で過ごした2023年卒業予定の大学生(以下、「23年卒学生」)の「ガクチカ」はどうなっているのだろうか? 

彼らは、コロナ禍の影響で大学2年生からオンラインを中心とした学生生活を強いられ、コロナ前までの対面を基本とした授業やサークル活動、アルバイトなどが十分にできず、夢に描いていたキャンパスライフとは異なる生活を余儀なくされている世代だ。

採用支援事業を行う株式会社ネオキャリア(東京都新宿区)は、23年卒学生と、新卒採用を行っている企業の採用担当者を対象に、コロナ禍のガクチカに関する実態調査を実施した。学生と企業のガクチカに対する重要度や考え方などの実態を、今日と明日とで見ていこう。

【「コロナ禍の就職・採用活動に関する実態調査『ガクチカ』編」調査概要】

調査対象 「2023年春」に卒業予定の大学生・大学院生(242名)
新卒採用を行っている企業の採用担当者(161名)
調査項目 コロナ禍が採用・就職活動に及ぼした影響について
実施期間 2022年6月29日(水)~2022年7月8日(金)
調査方法 インターネット

理系のガクチカは「ゼミや研究などの学業」多め

まずはガクチカの内容に対する調査結果からみていこう。実際に学生はガクチカとしてどのようなことを話しているのだろうか。

トップ3は、1位:アルバイト(61.2%)、2位:ゼミや研究などの学業(39.7%)、3位:サークル・部活(39.3%)となった。

文理別に見ると、文系では1位:アルバイト(62.5%)、2位:サークル・部活(35.8%)、3位:ゼミや研究などの学業(35.2%)に対し、理系では1位:アルバイト(57.6%)、2位:ゼミや研究などの学業(51.5%)、3位:サークル・部活(48.5%)となった。

約8割の学生「自信のあるガクチカがある」

さて、コロナ禍に学生生活を過ごした23年卒学生は、やはり、ガクチカを身につけるのに苦労したのだろうか? 

自信のあるガクチカを持っているか聞いたところ、76%の学生が「自信をもって企業にアピールできるガクチカを持っている」と回答した。意外と多くの学生がガクチカを身につけられたように見える。

約4割の学生「コロナ禍はガクチカに悪影響あり」

しかし、「コロナ禍がガクチカに悪影響を及ぼした」かどうかを聞くと、全体で約4割(44.6%)の学生が「悪影響があった」と回答。

また、これを文理別に見ると、文系は約5割(48.3%)、理系は約3割(34.8%)となり、文理で13.5ptの差が出た。文系よりも研究がある理系学生の方が、選考過程において日々の学業の内容を話しやすい状況があるため、コロナ禍でのガクチカへの影響が少なかったのではと考えられることが分かった。

そして、選考を有利にするために「自身のガクチカに事実と異なる内容を盛り込んだことがある」かどうかを聞いたところ、4人に1人(25.6%)の学生が「ある」と答えた。

盛りガクチカより地道な努力エピソードが有効

76%がガクチカに自信を持っている一方で、25.6%がガクチカを盛って就活に臨んでいた事実について、株式会社ネオキャリアの就職エージェント事業部・副事業部長の橋本 健一(はしもと・けんいち)氏は次のように分析する。

「今の就活生はデジタルネイティブ世代といわれ、スマ―トフォン一つであらゆる情報を入手しています。就活情報も同様で、『実際に内定獲得をしたガクチカ例』などの情報は簡単に手に入ります。学生生活の大半をコロナ禍の影響で制限されているなか、先輩内定者たちの華やかなガクチカを目にし、『先輩の成功例にあるような内容をガクチカとして書かなければ内定が貰えないのではないか』と不安を感じている就活生も多くいます。

ある就活生から『アルバイト先の飲食店で新メニューを開発し、店の売上に貢献した』というガクチカの相談を受けました。結論から言うと、実質的なメニュー開発をしたのは店長であり、自身はお客様から聞いた要望を店長に伝えただけだったとのこと。先輩内定者の助言を受け、『アンケートを取って意見を反映した』など様々な装飾をつけて、あたかも自分が企画~開発までやったと思わせてしまうような表現をしていたのです。

『この経験から自信を持って企業に伝えたいことは何か』とその就活生に聴いてみたところ、『普段から接客でお客様の顔と名前を覚えたり、お気に入りのメニューを覚えていること』と返ってきました。コロナ禍でお客様が減り、リピートしてもらうために地道な努力をしており、その延長で、お客様から『こんなメニューがあったらいいな』と言われたものを店長に伝えたのだといいます。『盛ったメニュー開発の話より、地道にお客様との関係性をつくったエピソードを笑顔で話した方があなたらしいのでは?』と伝えると、その就活生は素直に理解し、受け入れてくれました。

このように、就活生も企業を騙そうとしてガクチカを盛っているわけではありません。ネット上にありふれた情報や先輩の情報をすべて鵜呑みにし、コロナ禍の影響で思うように活動できなかったことも相まって、『盛らなければ内定を貰えないのではないか』『自身のガクチカではエピソードとして弱いのではないか』などという不安を過剰に掻き立てられているのです」

 明日は、企業のガクチカに対する考え方を調査したアンケート結果を見てみよう。

(取材・文/大友康子)