Press "Enter" to skip to content

海外からの帰国体験記|ブラジル・ドイツ・ハンガリー・イギリスからの帰国 東京大学 文科一類 M・Uさん(19歳)

A・Kさん

マイノリティを経験したことで人権に対する意識が強く芽生えました

東京大学 文科一類 1年 M・Uさん(19歳)
※2021年11月インタビュー時点

渡航歴

時期 場所 学校
0~1歳 ブラジル・サンパウロ  
1~4歳 ドイツ・デュッセルドルフ  
4~8歳 ブラジル・サンパウロ 日本人学校
8~12歳 日本 私立小学校→私立中学
12~15歳 ハンガリー・ブタペスト インターナショナルスクール
15~18歳 イギリス・ロンドン インターナショナルスクール
18歳~ 日本 現在、国立大学

様々な国で暮らし、多様な文化に触れる

現在、東京大学へ通うM ・Uさんが、入学前に日本で暮らした期間は、8歳から12歳までのわずか4年間。それ以外は、ブラジル、ドイツ、ブラジル、ハンガリー、イギリスと世界各地を転々としてきた。

「東京都内の私立小学校に編入する前はブラジルのサンパウロに住んでいたのですが、治安がとても悪かったので一人で出歩くことはまずありませんでしたし、通学する時も防弾車に乗っていました。そのため、帰国後に日本で一人で電車通学するのは不思議な感覚でした。最初は一人で外を歩くのも怖かったのですが、徐々に慣れてきて行動範囲も広がり、楽しく過ごせるようになりました」

その後、中学へ内部進学したM・Uさん。英語演劇部に参加して大道具を担当するなど充実した学校生活を送っていたが、文化祭での公演本番を迎える直前に今度はハンガリーのブタペストに移ることになる。

「後ろ髪を引かれる思いでした。公演の映像は後で友人に送ってもらいました。ハンガリーは外国人の割合がとても少なく、また難民や移民に対して厳しい法律が発効された時期だったからか、正直、排他的な国の印象があります。通っていたバレエ学校でも仲間に入れてもらえないことがあったり、道端でヘイト発言を浴びるなどの経験もしました。通っていたインターが多国籍ですごくフレンドリーな空間だったので、そことのギャップがとても大きかったです」

イギリスのインターでアイデンティティ自問

15歳になったM・Uさんは、イギリス・ロンドンに渡る。

「イギリスの国柄は私の肌に合いました。他人との適度な距離感が日本人の感覚に近く、居心地が良かったですね。でも『日本の大学に行こう』と決めたのは、イギリスで通っていたインターでのこと。インターナショナル・デーで自国の文化を表現するという催しがあったのですが、その時に改めて自分のアイデンティティについて考えたんです。このままずっと海外で暮らしていると日本人的なものを失くしてしまいそう。そんな気がして、日に日に日本に帰りたいという思いが強くなりました」

高校2 年生の頃、模擬国連に参加してオランダのハーグを訪ねた時の1 枚。

日本の大学に進学することを決めたM・Uさんは一時帰国し、5校のオープンキャンパスに参加。その中で夢を最も実現できそうだったのが、東京大学だったという。

「高校の在学中から夏休みを利用して駿台国際教育センターの夏期講習を受け、卒業後に帰国してすぐに帰国生大学受験コースに通い出しました。初めての一人暮らしをしながらだったので大変でした
が、他の帰国生たちの意識がとても高く優秀で。大きな刺激を受けて勉強に打ち込むことができました」

法制度の改革に携わり、人権問題を解決したい

努力が実り、M・Uさんは文科一類に合格。日本が抱える社会課題の解決を目指し、勉学に励んでいる。

「日本は先進国の中でもマイノリティに対する人権意識が希薄な国だと言われています。将来は、海外でマイノリティの立場を経験したことを生かして、人権侵害を見逃さない具体的な制度作りに携わ
りたいと考えています。今、興味を持っているのは法哲学の分野です。法制度と人の心の関係を読み解くことで、人権意識が形作られる背景をより深く理解できるのではないかと考えています」

今でも仲が良い駿台国際教育センターの同期たちと東京大学の入学式で撮影。

様々な国に暮らしたことで、どんなコミュニティにもすぐに馴染める適応力が身に付いたというM・Uさん。現在は、政治研究サークルや人権関連のゼミナールなどに所属している。

「日本の制度やメンタリティを理解するには、海外と比較することも大切だと思います。ですので、卒業後は再び海外に出て活動することも考えています。私の根底にある人権に対する問題意識を解決するため、これからも視野を広げていきたいと思います」

サークルやゼミの情報など、東大生のための様々な情報を集約・発信する「UT-BASE」で活動。写真はミーティング時(撮影時のみマスクを外しています)。

親への感謝

どこの国で暮らす時も、両親は私がしたいことをできる環境を整えてくれました。バレエ学校の情報を調べてくれたり、予備校に通う際に寮を探してくれたり、たくさんサポートしてもらいました。英語ができずに苦労していた時、一所懸命教えてくれたことが特に記憶に残っています。