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TOEFL®にみる日本人の英語力〜教育大国シンガポールの現場から〜

シンガポールが1位!はたして日本の順位は……?

2020年度から始まる新しい大学入試の英語では、今までより実用的な技能を測るテストに切り替わり、国際的な外部テスト「TOEFL®」などでの代替受験も可能となります。

変革期の今、日本そしてアジア各国の英語力をTOEFL®を通して確認しましょう。今や教育大国となったシンガポール在住の後藤氏が指南します。

日本より進んでいるアジア各国の英語教育

長年の懸案だった試験偏重から、実用重視の英語力獲得についに動き出した日本の英語教育。

一方アジア各国はというと、すでに多くの国で、英語で高等教育を受けることができる「アカデミック英語」への転換を遂げている。これは中上位所得層の増加と進学率の急激な向上を背景にしたもの。

結果、各国は英語教育を改革し、英語力が急激に伸びている。シンガポールに住み、ASEAN諸国の学生たちと接している筆者がその顕著な変化を実感し始めたのは2010年頃からだ。

経済や教育制度のあり方によってスコアが分離

世界的に認知度の高い英語運用能力テストの一つであるTOEFL®の各国平均スコアの推移でその伸長度合を見てみよう。

インターネットベースの試験(iBT)が開始された2005年から2017年までの12年間、7カ年度のアジア主要16カ国・地域の受験者平均スコアと推移(伸び)を比較してみた。

結果、概ね次の3グループに分かれ、教育制度の在り方と経済レベルからそれぞれの特徴が見えてくる。

平均スコア別3グループ

第1グループ(80台後半以上)…旧英米植民地で英語を(準)公用語とする国・地域

第2グル―プ(70台後半~80台半ば)…GDPが大きく伸び、急速にグローバル化が進んでいる国・地域

第3グル―プ(70台前半以下)…閉鎖的社会主義国体制、紛争等の理由で経済発展が遅れ気味の国・地域

第1グループはイギリスやアメリカの旧植民地で、独立後も英語が公用語として使われてきた。高等教育の主な教授言語としても使われてきたので、高いスコア取得は当然の結果だろう。

第2グループは英語以外の母語が共通語で、教育もその言語で行われてきたが、グローバル化が急速に進んだ2000年以降、競うように英語教育改革を推進。

特に韓国、インドネシア、ベトナム、台湾の諸国・地域は英語で高等教育を受けられるようになるための英語教育を開始している。

また近年まで英語教育が遅れがちだったモンゴルでも、中等理数教育を二重言語教育(英語・モンゴル語)に切り替えた結果、平均スコアが急激に上昇している。

日本の英語運用力は先進国で最下位

このように、経済レベルを指標とした見方ができる中で、日本の平均スコアは何と第3グループ=発展途上国レベルに属する。

この12年間に多少改善されてはいるが、先進国としては問題外の低レベル。かなり深刻な事態である。

仕事を問題なくこなせるレベルの英語の運用能力を有している第2グループのアジア各国の大卒生たちと比べるとその差は歴然だ。英語力が低く、多民族、多国籍のスタッフとの協働作業や取引先との交渉経験に乏しい日本の大卒生は国際企業では全く戦力にならないだろう。

グローバル化しなければ存亡の危機にさらされる国際企業や国家のかじ取りを行う日本政府中央官僚たちの焦燥感が大きいのもうなずける。

「英語による運用能力」というグローバル社会における重要な基本スキルの一つが、日本の大学を卒業しても養成されないというのは由々しき事態である。

共通語=英語力が低ければグローバルコンピテンスは高くならず、グローバルな人的ネットワーク構築力は育たない。有用な人材を養成、輩出しなければならない大学にとっても存在意義を揺るがす危機的事態なのだ。

とりあえず、日本の英語力のレベルを少なくとも第2グループ諸国並みに上げることが急務といえよう。

2017年版アジア主要国のTOEFLⓇスコア平均の推移と日本との比較

2017年版アジア主要国のTOEFLⓇスコア平均の推移と日本との比較

“※1…TOEFL®の世界順位は調査対象となった234ヵ国・地区のうち回収ができた170ヵ国・地区のスコアデーターが基となっています。同順位は全体で170ヵ国中となっています
※2…ラオスは2006年から2017年の増減
【出典】『Test and Score Data Summary for TOEFL iBT Tests 2005-17』より”

お話を伺った方

後藤敏夫氏

後藤敏夫氏

1990年、香港・シンガポールに海外子女専門進学塾『オービットアカデミックセンター』設立。海外での教育の実践経験と実績、知見をベースにして、日本の教育法人を中心に説明会やセミナーを実施、国際教育情報を発信している。『上智大学経済学部』卒業。シンガポール在住。『ワールドクリエィティブエデュケーショングループ』CEO。