2021年卒採用の採用広報が3月に解禁されたものの、新型コロナウイルスの感染拡大により、大きな混乱が生じている。そこで、就職情報サイト「キャリタス就活」を運営する「株式会社ディスコ」(本社:東京都文京区)が、全国の主要企業を対象に2021年卒採用への影響について緊急調査を実施した。(回答社数:864社/調査期間:2020年3月26日~30日)。
大手企業の5割強が「採用活動への影響を受けている」と回答
これによると、新型コロナウイルス感染拡大による採用活動への影響について、「かなり影響がある」と回答した企業は46.3%に上り、「やや影響がある」(42.2%)を合わせると約9割の企業が「影響を受けた」と回答した。従業員規模別では、規模が大きいほど「かなりある」の割合が高く、大手では5割強に上る(56.4%)。業界別で「かなり影響がある」の比率が高いのは「IT」(53.5%)、「商社・流通」(49.2%)だった。
さらに、調査を行った3月下旬時点での採用活動状況として最も多かったのは「基本的には進めているが、一部見合わせている」で約半数(47.7%)。次いで「当初の予定通り進めている」(25.2%)と続く。WEB活用による代替などを、感染防止策を講じながら採用活動を継続する企業が大半のようだ。なお、「採用を取りやめる」は、現段階では1%未満(0.5%)となっている。
3⽉下旬時点の採用活状況
「採用活動を一時的に見合わせ」と回答
- 急遽、対面での面接を取りやめることになった。延期かWEBで実施かはこれから検討する。<5000人以上/メーカー>
- 3月と6月に予定していた会社説明会の3月開催を中止にし、6月に1回だけ開催する。<300〜999人/商社>
「部分的に進めているが、基本的には⾒合わせ」と回答
- 合同説明会がすべて参加できなかったため、インターンシップで接触のあった学⽣のみ選考を進めている状態。<299人以下/メーカー>
- 2月に選考開始した学⽣に内定を出し、3月以降は選考を控えている。<1000〜4999人/メーカー>
「基本的には進めているが、部分的に⾒合わせ」と回答
- 会社説明会については⼀律中止としたが、選考活については計画通り⾏う予定でいる。<1000〜4999人/官公庁団体>
- ⼯場⾒学、社員座談会等、公共交通機関を使用しての移や対面を伴うイベントを全面的に中止。これにより、学⽣の志望機醸成が困難になっている。<1000〜4999人/メーカー>
「当初予定通り」と回答
- 今のところ、WEBを活用し、当初スケジュール通り進めています。<1000〜4999人/IT>
- すでに終了しており、あとは辞退者が出た時の対応を残すのみ。<300〜999人/サービス>
※<従業員規模/業界>
コロナの影響で進む、WEBを活用した就職活動
新型コロナウイルスの影響で「WEBセミナーを新たに導入した」企業は3割強(34.0%)。「もともと実施していた/実施予定だった」(16.3%)を合わせて半数以上(50.3%)がWEBセミナーを実施していることも分かった。なお、実施した企業のうち約6割(57.3%)が「収束後も利用したい」と回答している。
WEBセミナー実施の効果
「効果を感じる」と回答
- 少ない労⼒で多くの学⽣にアプローチをかけられる。<1000〜4999人/メーカー>
- 学⽣⾃⾝の感覚としてリラックスした状態で臨めている状況なので、質問等がしやすそうと感じる。<1000〜4999人/サービス>
- フロア⾒学や先輩社員との懇談会等で社風を感じてもらう効果は薄れるが、居住地に関わらず参加できるため、⺟集団は広がる。<299人以下/IT>
- 正直慣れの問題かと思います。学⽣も不慣れなツールのため、逆に寄り添いやすいと思います。<1000〜4999人/IT>
「まだわからない」と回答
- 接触人数は増えたが、対面ではないため企業理解に繋がっているかはかりきれないため。<5000人以上/エネルギー>
- エントリー人数が増えたのはWEBセミナーの影響かもしれないが、おそらくすべて⾒ないで⼤雑把な志望機で応募してくる学⽣が増加している。<299人以下/メーカー>
現段階では「当初の計画通り採用活動を行う」が約7割
さらに2021年卒採用予定数への影響を問う質問では「当初の計画通り」が7割(70.6%)を占め、「下方修正する見込み」は調査時点は1割未満(9.0%)に留まった。前年比較では「前年と同程度」が5割超(55.0%)。「減らす」(17.6%)が「増やす」(14.3%)をやや上回っている。
売り手市場が続くと思われた2021年卒者の就職活動だが、まだまだ収束は見えない状況。ウイルスという見えない敵が思わぬ形で学生たちを苦しめることになりそうだ。
(取材・文/松井さおり)