Press "Enter" to skip to content

受験生の朝食事情をチェック!集中力の高まる朝食とは?(後編) 

昨日は、一般社団法人 日本健康食育協会による「受験生の朝食」についての調査結果を中心に紹介した。

この調査結果について、同協会のお米先生・柏原ゆきよさんが「朝食を摂るメリットやおすすめの朝食」について、具体的なアドバイスを寄せているので見ていこう。

空腹状態は集中力にマイナス!

柏原さんは、朝食を摂るメリットについて次のように解説してくれた。

「私たちの体は、寝ている間にもエネルギーを消費しているため、目覚めた時にはエネルギー(糖)が枯渇した状態です。特に、脳はエネルギーの消費量が圧倒的に多い臓器なので、エネルギー切れの影響が大きいです。この状態では、思考力が落ち集中力も上がらないので、朝食でエネルギーをチャージし、働きやすい状態を作る必要があります。

脳は、主に糖質をエネルギーとして使っているので、朝食には糖質が必要です。ただし、砂糖などの甘い糖質は、血糖値の変動が大きく不安定になるため、できるだけ避けましょう。血糖値の変動が大きいと、メンタルが不安定になりやすくなります。

朝食を摂るとエネルギー消費が活発になり、体温が上がって血液の循環も良くなるので、脳が活性化するだけではなく、腸の動きも活発になります。これを脳腸相関と言います。腸内環境が整うと、幸せホルモンと呼ばれる〝セロトニン〟の分泌が活性化することでメンタルが安定し、集中力が高まることがわかっています。 また、朝起きてから14~16時間経つと、セロトニンは睡眠ホルモン〝メラトニン〟を作り出します。メラトニンは、入眠をスムーズにして睡眠の質を良くします。睡眠時間や質は、学習効率にも影響すると言われていますので、朝食を摂っていないお子さんは朝食でエネルギーチャージし、集中力を高めると良いでしょう。」

朝食は〝ごはん派〟をすすめる理由とは?

朝食にごはんをおすすめする理由を、柏原さんは次のように教えてくれた。

「朝、エネルギーが枯渇している状態で、吸収が早く血糖値を急上昇させる砂糖などを摂ると、血糖値が一気に上がり高血糖になります。高血糖を起こすと、血糖値を下げるために膵臓はインスリンをたくさん分泌しますが、その反動で低血糖を起こしてしまいます。低血糖状態では、糖が十分に脳に供給できずエネルギー切れになってしまい、集中力が出ません。

砂糖などの甘い糖質は、糖の分子が小さいため分解の必要がありません。そのため吸収も早く、血糖値が乱高下し、すぐに枯渇してしまいます。一方、米の糖質は分子の大きいデンプンなので、消化吸収が緩やかに行われ、血糖値が乱高下しにくく、持続力があります。しかし、お米(ごはん)も早食いをすると血糖値が上がりやすくなるので、よく噛んで食べることが重要です。

また、セカンドミール効果(※1)を意識して朝にお米(ごはん)を食べると、朝食後だけではなく昼食後、夕食後も血糖値が急上昇しにくく、安定します。血糖値が乱高下すると、ホルモンが乱れやすくなるためメンタルが不安定になり、太りやすくもなります。さらには、生活習慣病のリスクも高まるとも言われていますので、注意しましょう。」

※1 セカンドミール効果とは、朝食(その日最初に摂る食事)が、次に摂った食事の後の血糖値にも影響を及ぼすという理論。1982年にカナダ・トロント大学のジェンキンス博士が発表した。

集中力を高める朝食はこれ!

おすすめの朝食について、柏原さんは「次の①~⑤を含む、ごはんと味噌汁、おかずの揃った和朝食は、集中力を高める理想的な朝食です」と言う。

効率の良いエネルギー源であるお米を主食にする:脳の活性化、1日の血糖値の安定
体を温める食事:整腸、体温を上げる
よく噛んで食べられるもの:脳の活性化、セロトニン増加
トリプトファン(※2)とビタミンB6(※3)が同時に摂れる:セロトニン増加
食物繊維がしっかり摂れるもの:腸内環境改善、メンタルの安定

例えば、雑穀入りのごはんを山盛り1杯と具沢山の味噌汁、魚や卵、納豆などタンパク質が摂れるおかずを1品の「一汁一菜」スタイルがおすすめだという。

こうした朝食は、受験前日や当日はもちろん、普段から摂り入れたい朝食と言えるだろう。

※2 セロトニンの材料になるトリプトファンを多く含む食品は、米や雑穀類、大豆製品(豆腐・納豆・味噌・豆乳など)、鶏卵、魚卵(タラコなど)、ナッツ類(アーモンド・クルミなど)。

※3 セロトニンを作る時に必要となるビタミンB6を多く含む食品は、魚類(サケ・サンマ・イワシ・マグロ・カツオ・サバなど)や鶏肉など

朝日を浴びて朝食効果をさらにアップ!

さらに、柏原さんは朝食の効果を高めるコツも教えてくれた。

「朝日を浴びましょう。朝起きて日光を浴びると、メラトニン(睡眠ホルモン)の分泌が止まり、脳が覚醒します。それと同時に、セロトニンの分泌が始まり、視覚からの光刺激によって合成が促進されます。朝起きてからもメラトニンが分泌しているままだと、眠くなり、メンタルも不安定になります。そうならないためにも、朝日を浴びてメラトニンをリセットすることが重要です。 また、歩くこともセロトニンを増やすリズム運動としてとても効果的です。朝食を摂った後にウォーキングして、受験に備えると良いかもしれません。」

まずは朝食の習慣をつけることが大事

とはいえ、無理は禁物。柏原さんも無理のない範囲で、まずは朝食習慣をつけることが大切と話す。

「お子さんは、きちんと朝ごはんを食べていますか?

最近のお子さんは、忙しく、夜寝る時間もだいぶ遅くなってきています。そのためか、朝、起きるのが辛く、ついつい朝食を軽視しがちです。でも、一日のスタートをどう切るかは、その日一日を左右する大きなことです。朝食が食べられない……という場合は、温かい汁物でもかまいませんので、何か口にする習慣からつけてみましょう。もちろん、パンでもかまいません。パンも、余裕があればトーストだけでなく、具沢山のスープで咀嚼を意識できるととても良いです。

無理のないことほど続けやすいので、出来ることから始めてみてくださいね。」

(取材・文/小野眞由子)