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帰国後の教育|英語圏の現地小学校に通う息子たち。日本語力をキープさせるには?-帰国便利帳ー

日本への帰国を前提にして子どもと一緒に海外で暮らしている場合は、今の生活を楽しみつつも、帰国後の教育について事前に知っておくことが大切です。そこで、「学校」や「英語力UP」や「日本語力の保持」や「日本で未履修の教科のキャッチアップ」etc、子どもの帰国後の教育にまつわる様々な疑問や不安を帰国子女教育に詳しい公益財団法人海外子女教育振興財団に伺いました。

Q.10歳と7歳の男の子2人を持つ母です。夫の赴任によって家族でイギリスに住み始めて早1カ月。息子たちは現地校に通っていますが、このままだと日本語の能力が落ちてしまわないか心配です。いつ日本へ帰るかは決まっていません。今、親としてできることはありますか?

A.英語圏の現地校(またはインターナショナルスクール)に通い、学校生活を英語で過ごすことにより「日本語力が落ちてしまうのではないか」という相談をよく受けます。保護者ができる対処法についてお答えいたします。

母語が最も急激に発達するのは2歳から4歳頃と言われています。さらに母語で学習できる力を確立させるには9歳から10歳頃までかかるとされています。

ご質問者のお子様たちの年齢は10歳と7歳ということですが、10歳のお子様は母語がすでに完成している年齢に達しているので日本語力が低下する心配はほとんどありません。ですが7歳のお子様は、完成後期の年齢ですので注意が必要です。日本語の刺激が少ない環境下で、保護者としてできることは「日本語にふれる機会をできるだけふやすこと」です。その方法を詳しくご紹介いたします。

補習校に通わせる

日本語で過ごせる補習校に通うことは、日本語力を落とさないためにとても重要です。週1回、必ず友だちと日本語で過ごすことによって日本語にふれる時間も増え、さらにストレスを発散できる効果もあります。

日本語の本を沢山読ませる

本を読むことは日本語力を落とさないだけでなく論理的な思考力を高めるので、できるだけ家に日本語の本を用意し、読ませてください。しかし中にはあまり本を読むのが好きでない子どももいます。そのような子どもに対しては、「国語の教科書を毎日音読させてから補習校に登校させ、日本語力の保持に努める」という方法も試してみてください。

家の中での日本語利用を徹底

家庭で日本語を自然に話しているか、いないかで、子どもの日本語での作文の質や読解力には大きな差がでてきます。そのため「家庭内では日本語で話す」というルールを決めることも大切です。このルールを決めても、あと2年もすれば兄弟同士でときおり家の中でも英語で会話するようになるでしょう。これは彼らにとって影響が強い(使いたくなる)言葉が日本語から英語に変わってきた証拠です。そのためこれが始まったら、「日本語力が落ちてきているかもしれない」と用心しましょう。家での日本語使用のルールを改めて徹底させるとともに、間違った使い方をしていたら、適切な使い方を示してあげてください。

日本語の大切さを自覚させる

「現地校に通う」ということは、その国の良き人間を育てるのが目標ですから、言語も含めて貴重な生活体験を通して異文化を身に付けたことを評価してあげましょう。その上で、日本に帰り「これから日本で生きていくためには正しい日本語を習得しなければいけないんだ」と子どもが自覚するように道をつくってあげることが大切です。そのように自覚した子どもは、帰国後、日本語や漢字の練習に一生懸命取り組みます。

このように、日本語力を下げないようさまざまな対策を打っても、日本語にふれる機会が少ない中では日本語力が多少下がるのは仕方がありません。帰国が間近に迫ってくると、保護者は子どもが日本の教育にうまく適応できるか急に焦りはじめ、突然、日本語や日本の勉強を押し付けることが多くなる傾向にあります。しかし一方的な押し付けでは、子どもの反発は大きくなるばかりです。そのため保護者は帰国前に今一度、我が子の力を信じてあげることが大切です。子どもは海外でたくましく成長します。帰国後も、足りないところがあれば自ら克服しようとするでしょう。

お話を伺った方

清水賢司氏

相談員 清水賢司氏

東京都の公立中学校で校長を歴任。スペインのラスパルマス日本人学校で勤務し、イランのテヘラン日本人学校校長として4年間イランに在住。現在は東京都海外子女教育研究協議会顧問、全国海外子女教育研究協議会海外幹事、2018年度より財団教育相談員。

 

イラスト/モリナオミ